こんな「読み間違え」でした。

昨日、国立劇場で開かれた「天皇陛下御在位三十年記念式典」において、天皇陛下(以下「陛下」)から平成の30年を総括し、国民への謝意を示す内容のお言葉を述べられました。

お言葉の全文は下記からどうぞ。
(宮内庁のページも載せときますが、譲位とともにページ構成が大きく変わってリンクが切れるかもしれません)

ちなみに、お言葉の中で陛下が声を震わせたのは、以下の3つのフレーズでした。

「…今日こうして国の内外の祝意に包まれ…」

↑冒頭の「祝ってくれてありがとう」という部分ですね。

「…日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ…」

↑陛下の平和に対する思いが強く滲み出たものと推察されます。

(平成がスタートして間もなく、全国から寄せられた「私たちも皇室と共に平和な日本をつくっていく」という静かな中にも決意に満ちた言葉について)

「…私どもは今も大切に心にとどめています」

↑日頃から「国民とともに」を標榜されてきた陛下だけあって、国民側がそれに呼応するかのように「皇室とともに平和な国づくり」の決意を寄せてくれたことが、心底嬉しく感じられたのでしょう。

何はなくとも、(即位後に限っただけでも)30年間の長きに渡るご公務、本当にお疲れ様でした。

で、昨日のお言葉ですが、「読み間違え」がありました。

これについて、報道では、
「原稿を読み間違えた」
「冒頭のお言葉に戻ってしまうハプニング
皇后陛下(以下「美智子さま」)がやさしくフォロー。ナイスアシスト
など、「間違いがあったけど、むしろお二人が支え合う絆の強さが感じられ、微笑ましい」というような論調が支配的です。

確かに、美智子さまが途中で気づかれ、原稿を一緒に確認なさる際のお二人の小声による以下のやり取りが、高性能なマイクでしっかり拾われていました。

陛下「ん? 何?(と、美智子さまからの指摘でお言葉をストップ。さらに…)

陛下「どうして? あ、そうか

美智子さま「違うんですね…

(この間、お二人で原稿を確認したり探したり。そして数秒後、正しい原稿を見つけて…)

陛下「これだ。どうも失礼」(と安堵の表情。その後、お言葉再開)

これを見聞きすれば、確かに微笑ましく思えるのですが、と同時に私などは、なぜこんなことになったのか、なぜ美智子さまがフォローに入らざるを得なくなったのかという「そもそも」が気になってしょうがありません。

ということで、全録レコーダーを駆使し、当該シーンを何度も再生して確認できたことをご紹介しておきます。

「読み間違え」の真相

なぜ美智子さまがフォローに入ったのか?

言うまでもなく、陛下が原稿を取り違え、お言葉の途中で「冒頭」に戻られてしまったからです。

なぜ冒頭に戻ってしまったのか?

全部で3枚ある原稿のうち、陛下が最初の2枚だけを手に取り、3枚目をお持ちにならなかったからです。
その上で、陛下は、「一番手前の原稿を読み終える → それをめくって一番後ろへと送り、次の原稿へと進む」という形でお言葉を続けていたのです。

よって本来であれば、「2枚目を読み終える → それを一番後ろへ送る → 3枚目が手前に来る」のですが、3枚目を手に取られなかったため「1枚目 → 2枚目 → また1枚目」というループが生じてしまったのです。

陛下はなぜ3枚すべての原稿を手に取らなかったのか?

これは、「その原稿がどこから来たのか」にもつながる話ですが、結論から言うと、原稿は陛下のお席の上(演台テーブルの上)に置かれていて、それをお立ちになった陛下がピックアップされてお読みになられたのです。
その意味では、陛下が3枚目をピックアップし損なったために起きたハプニングではあります。

誰が・いつ、席上(演台テーブル上)に原稿を置いたのか?

ステージ上の後列に着席していた侍従(陛下のお付きの人)が、お言葉が始まる直前になって陛下の席に近づき、原稿を席上(演台テーブル上)に置いたのです。
で、陛下は直後に立ち上がり、お立ちになりきってから原稿をピックアップされました。
言葉で再録すると、こんな感じです。

侍従が近づき、自分が持っていた原稿を演台テーブル上に置く

陛下、ご起立

間髪入れずに、侍従が陛下に何かを耳打ち。(放送では聞き取れず)

陛下(聴力が低下し、補聴器を使用)も聞き取れなかったようで、2度聞き返し、その都度侍従が何やら小声でささやく。(陛下、聞き取れたのかなぁ?)

侍従が後方に下がり、陛下が客席に向かって一礼。その後、原稿をピックアップ。(この時に3枚目を取り損なった、ということになります)

「侍従の耳打ちがあった」として、それが何か?

陛下が2度も聞き直しているということは、侍従の耳打ちは補聴器越しでもなかなか聞き取りにくいほどの小声だったものと思われます。
置かれた原稿をピックアップする直前に、侍従からなにやら囁かれ、それを聞き取ることに集中せざるを得ず、現在85歳の陛下が少なからず混乱なさってしまったのではないかと推察します。

そうはいっても、目の前の原稿ぐらい漏れなくピックアップできるのでは?

「着席中にピックアップ」であればそれもできたかもしれませんが、今回は「ご起立後にピックアップ」でした。
なにぶん、ご高齢の陛下ですから、原稿をつかむ指の感覚だって若い頃とは違うでしょうし、立ち上がったために席上の原稿との距離が開き、枚数が視認しにくかったとしても何ら不思議ではないと思います。

だとしても、演台がけの布まで掛けてあったんだから、真っ白な原稿の取り残しぐらい気づくのでは?

お席(演台テーブル)に演台がけが掛かってはいますが、そこには最初から「式次第」などが置かれていたように見えます。(両陛下がしばしばそれに目をやるシーンも映っていました)
つまり、最初からいくつかの「白い紙」が置かれていて、その上にさらに「白い原稿3枚」を置かれたとしたら、ご高齢の陛下がそれを見落とし、1枚ぐらい取り残してしまうことなど、普通にあり得るんじゃないかと思います。
現に、お言葉が冒頭に戻ってしまったことにお気づきになった美智子さまも、直後は陛下が手にする(2枚の)原稿をチェックするだけで、席上に置きっ放しにされていた3枚目の存在に気づくのは、陛下も美智子さまもほぼ同時だったように見えましたから。

ということは、要するに?

平和を希求され、争いがお嫌いな両陛下は絶対におっしゃらないであろうことを私は言ってしまいますが、この「読み違い」は、侍従のせいなんじゃないんでしょうか。

かつて陛下が式典などでお言葉を述べられる際には、上着の胸ポケットから原稿を取り出すことが多かったように記憶していますが、今回は何らかの事情で「直前に侍従が陛下に原稿を渡す」スタイルが取られたんだと思います。

それはそれとして、じゃぁどうして「3枚まとめて直接手渡ししなかったのか」が不思議でなりません。

お席の上になどでなく、直接「こちらの3枚でございます」と言って手渡しすれば、陛下が読み間違えることなどなかったのです。

実際、陛下は原稿を目で追うだけでなく、読み進めらるに連れて原稿に添える手指をずらして行を追うなど、「原稿内での読み飛ばし」が起きないよう、最新の注意を払っていらっしゃることが映像からも伝わってきます。

つまり、お読みになる原稿さえしっかりお手にできれば、陛下は完璧にお言葉を述べられるのであって、それをさも陛下のミスであるかのような「読み間違い」という表現は言うに及ばず、「美智子さま、ナイスフォロー」「お二人の支え合いが素晴らしい」的な美談仕立てな論調に対しても「そんな形で帳消しにしていいのか、これ?」という違和感が込み上げてきてしまっているのですが、私だけでしょうか。w

で、何が言いたいの?

これは「読み間違い」などではなく「原稿の渡しミス」であり、さらに言えば「ご高齢の両陛下に対する宮内庁職員の気遣いの足りなさ」に起因しているんじゃないか、と思っています。

30年に渡り、こんなことにも気を配りながら全身全霊で「象徴としての天皇」の務めを果たされてきた陛下。
そして、共に歩まれてきた美智子さま。

退位後は、どうかごゆっくりなさっていただきたいものです。
お疲れ様でございます。
 
 
【注】
「原稿などの書類を、陛下に直接手渡しするのは皇室の作法としてNG」なのかもしれませんが、だとしてもご高齢の両陛下への気配りが足りないんじゃないかという気がしてなりません。
このままだと5月に即位される新天皇・皇后両陛下(現・皇太子ご夫妻)に対するサポート体制まで心配になってきます。