『いだてん』は、いろんな意味で記憶に残る大河ドラマになった。

まぁ、タイトルの通りでして、有り体に言えば「記録より記憶」ということかと思います。

NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』を1年間視聴してきて、私が感慨深かった点を羅列してみます。

 

2つの元号をまたぐ大河ドラマになった。

実は、第1回放送が1989年(昭和64年)の元日、第2回の放送予定が同年1月8日(平成の初日のため休止)だった『春日局』という先例があるようなのですが、スタートから4ヶ月後に平成 → 令和の元号またぎを迎えたこの『いだてん』もまた、大河ドラマの歴史の中で永く記憶されるんじゃないかと思いますし、新しい元号を迎えるのに相応しい作品だったとも思います。

なんせ、久々の“近現代もの”でしたし。

 

近現代もので、かつ実在した人物が登場。

近現代ものとしては、1986年の『いのち』に続く2作目ではありますが、『いのち』には歴史上の実在人物は登場しませんでした。(台詞やナレーション内で語られただけ)

それに対して『いだてん』では、まさに近現代ものらしく、かつて実在していた人物がバンバン登場しました。

例えば、現役政治家河野太郎さん)の祖父河野一郎さん)が登場したり、1964年の東京オリンピックで活躍した女子バレーボール選手(今もご健在の方々がおいでです)が登場したり、さらに当時のオリンピック組織委員会において「国旗担当」を務めた方(吹浦忠正さん)に至っては、ドラマ内に登場しただけでなく、ご本人が本作品の「国旗考証」スタッフとしてクレジットされていたりします。

このように、多くの“生き証人”が関わった大河ドラマというのは、極めて珍しいのではないかと思います。(ドラマのリアリティを高める上でも貴重だったことでしょう)

 

“当時の実際の映像”が多用された。

関東大震災ベルリンオリンピック学徒出陣1964年東京オリンピックの放送映像・記録映画などなど、実に多くの資料映像が“本編の一部”として引用されておりまして、それら「本物の映像」と「ドラマとして再現したシーン」が違和感なく行き来できるようにするために、VFX担当を含めた演出陣の工夫や苦労は相当のものだったと思われます。

これが純粋な“時代劇”ものであれば、例えば「関ヶ原の戦い」の記録フィルムとの整合性などを気にする必要はないわけで、その意味では「記録映像がたくさんあって、尺は埋められるけど、むしろ手間がかかって大変」という感じだったんじゃないかと想像いたします。

 

とはいえ、史実を何でもかんでも取り上げたりはしない。

「動かぬ証拠としての資料映像」がたくさんあるからと言って、それらにがんじがらめになると、ドラマではなくドキュメンタリーになってしまいます。(現に、以前ご紹介したNHKスペシャル『東京ブラックホール』は、まさに1964年東京オリンピックの“影”の部分にスポットを当てた映像がテンコ盛りで、見ていて『いだてん』とのギャップにクラクラしましたし)

前回の東京オリンピックにまつわる史実をどのへんまで取り入れ、どのくらい創作脚色を混ぜ込んで“エンターテインメント作品”として成立させるのか。脚本の宮藤官九郎さんのご苦労と力量には、ただただ頭が下がります。

ついでに申し上げると、このような大河ドラマが成立できたのですから、今後さらに「近現代の実在の人物を主役にする作品」が作られてもいいんじゃないかと思います。ただし、NHKとしては政治色や特定企業色が強くなりすぎるのはご法度なハズなので、すでに亡くなられた文化人スポーツ選手などを主役にするのが妥当なところでしょう。思いつきで申し上げると『オイっす!〜いかりや長介物語〜』とか面白いんじゃないかと。大河ドラマの放送も8時からですし。(ホントは、日本のテレビの歴史と共に歩んできた大女優さんを主役にするのが最適かと思ったりもしますが、まだまだご健在なので、ここではひとまずスルー)

 

その他

以下、小粒の感想をいくつか簡潔に記録しておきます。

  • 脚本家自身の出演って、大河ドラマ初じゃないだろうか?(これはご褒美? まさか罰?)
  • 主要出演者の途中降板が相次いだけど、残されたキャスト・スタッフは、本当によく頑張って完走なさったと思います。(そこに一番感動してしまいそうなくらいです)
  • 選挙の開票特番、ラグビーワールドカップの準々決勝(日本vs南アフリカ)などで休止が多く(通常は全50回前後のところ、全47話で完結)、「40回以降は、どのエピソードを切り落とすかとの戦いでした。あと2話分あればアレもコレも拾えたかなぁ(笑)」という宮藤官九郎さんの公式インタビューでの発言は、たいへん重く受け止めてしまいました。
  • 「大河ドラマの最低視聴率を更新」と批判的(あるいは揶揄的)に報じる記事がある一方、「視聴率など無関係に傑作だった、面白かった」という高評価の声も多いようですが、制作陣としてはやはり「こんなに面白い作品だったんだから、もっとたくさんの人に見てほしかった」というのが本音なんじゃないかと思います。観客の量を示す指標として「リアルタイム視聴率」でいいのかどうかという論点もありますが、「地上波で、歴史ある大河ドラマ枠で、多額の予算を投じて制作する」以上、量も質も欲しかったというのが、全キャスト・スタッフに共通する想いであろうと想像します。

 

以上、いろいろと私の記憶に残った『いだてん』でしたが、全話分の録画を早めにBlu-rayディスクにダビングし、老後の楽しみに保存しておきます。

 

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※「『いだてん』と、直後の『NHKスペシャル』のギャップのスゴさ」について触れた過去記事はこちら

※『いだてん』に関するそれ以外の過去記事はこちら