こんな「NHKスペシャル 東京ブラックホールII」でした。

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さる10月13日は3連休の中日でしたが…、

と、いろんな出来事が重なった日でした。

私は微熱が続いていたため、薬を飲んでベッドで横になりながら、朝から晩までほぼNHK総合テレビをつけっぱなしにしていたのですが、その中でも夕方18時から『台風関連ニュース』 → 『NHKニュース7(台風関連中心)』 → 『いだてん(第39回&次回予告)』 → 『ニュース』 → 『NHKスペシャル 東京ブラックホールII 破壊と創造の1964年』の続く4時間は、あまりにシュールな展開で、目まいがしそうなほどでした。(←微熱のせいもありますが)

 

 

1.まず18時台・19時台の『ニュース』

言うまでもなく、前日(12日)の夜に台風19号が上陸し、一夜明けて判明した甚大な被害の映像が、これでもかと流されました。

多数の犠牲者・行方不明者が発生し、国土や社会インフラが大きく毀損されてしまった事実に愕然とし、そんな中でも救援・復興に動き出している人々の様子に胸がつまります。

 

 

2.続いて『いだてん』

“第2部 田畑政治・前編”のラスト回である「第39回・懐かしの満洲」がオンエア。

「満洲に慰問に行っていた最中に終戦を迎え、戦後の混乱の中でなんとか引き揚げてきた若き日の古今亭志ん生(森山未來)」を回想する1960年代前半の志ん生(ビートたけし)がついにクロスオーバー。

その他、ドラマ初回からここまで付き合い続けてきた人にとっては、涙なくしては見られない名場面がいくつも登場。

 

 

3.直後に『いだてん・次回予告』

画面に流れた字幕スーパーとセリフで再録してみます。

【字幕】最終章スタート

【字幕】敗戦を乗り越えて

【セリフ】(阿部サダヲが演ずる主人公・田畑)「白人・黒人・黄色人種グッチャグチャに混ざり合ってさ!

【セリフ】(星野源が演ずるジャーナリスト・平沢)「そこだよそこ!

【字幕】1964 東京五輪へ

【セリフ】(松重豊が演ずる東京都知事・東)「変わるんだよ日本は! このオリンピックで!

【字幕】高度経済成長

【セリフ】(安藤サクラが演ずる女子バレーボールチームの主将・河西昌枝)「私たちは青春を犠牲になんかしていない! だってこれが私の青春だから!

【画面には、女子バレーボールの鬼監督・大松博文を演ずる徳井義実や、水泳界のスーパースター・古橋廣之進を演ずる北島康介もチラリ】

【字幕】選手のため 平和のため

【字幕】世界に見せたい日本にする

【セリフ】(主人公・田畑)「俺たち日本人は、面白いことやんなきゃいけないんだよ!

という調子で、戦後日本の復興の象徴である1964年東京オリンピック開催に向け、いよいよ本格始動するキーマンたちが次々と紹介されておりました。

 

ちなみに関東地区は台風被害が継続していて、ほぼ終日L字型の画面レイアウトで「台風関連情報」が表示されていたこともあり、各地の台風上陸 → 被害拡大 → 救助・支援という現実と、ドラマ予告編内の終戦 → 荒廃 → 復興というトーンが私の中でリンクしてしまい、
「そうだそうだ。日本は何度も自然災害から立ち直ってきたし、みんな助け合ってるし、Pray for Japanじゃんねぇ!」(←「じゃんねぇ!」は主人公・田畑の口癖)
と、ちょっと熱くなったりもしました。(←微熱のせいでもあります)

 

 

4.ここでもう一度、台風関連を中心とした『ニュース』が15分間

“描かれる時代が行き来する”のが特徴の『いだてん』から、一気に令和元年の10月13日の現実に引き戻され、改めて今回の被害の大きさを脳味噌に刻み込みます。

 

 

5.で、とどめの『NHKスペシャル 東京ブラックホールII 破壊と創造の1964年』

この番組のアウトラインを、Nスペの公式サイトから引用します。

日本に、最も夢と希望があふれていた時代と、ノスタルジックに語られる年、1964年。しかし発掘された映像は、人々の記憶から多くの事実が失われていることを物語る。公害問題の深刻化、東京一極集中の加速、巨大公共工事に伴う汚職の頻発。東京に出現したブラックホールは、オリンピックという巨大な引力によって、日本中のヒト、モノ、カネを飲み込んでいき、今に至る矛盾の種を産み落としていた。

1964年の突貫工事の現場にタイムスリップした、現代の若者は、そこで何を目撃し、どんな出会いを果たすのか…。歴史を追体験する新感覚ドキュメンタリーである。それは、まもなく2度目のオリンピックを迎える、私たちの道しるべとなるはずである。

というように、
「戦後の焼け野原からの復興と高度経済成長の象徴である1964年東京オリンピックを成功させるために、日本がいかに無理をして、いかに大きな歪み(ひずみ)も生み出しながら突貫的に社会構築を進めてきたのか。そしてそれは現代日本にどのように影響しているのか」
について、“当時の資料映像の中俳優を合成配置”したドラマ仕立てで描いていくというのが、このドキュメンタリー作品の特徴です。

それはつまり、(ついさっきまでやっていた)『いだてん』を“光”と捉えるならば、まさに真逆の“闇”を、これでもかと紹介する番組だったわけです。

 

たとえば、こんな調子で…。

  • 国家予算の1/3に当たる金をオリンピック関連事業に注ぎ込み、巨大公共事業が活発化したが、安全管理は後回し。工事現場では事故が多発
  • オリンピック関連予算に群がる利権の争い。2,000件の汚職

 

  • 首都大改造で東京一極集中が加速。出稼ぎ・集団就職で、この頃は毎年30万人(!)が東京に流入。
  • 「世界に冠たる大東京が地方出身者の寄せ集めで成り立っているというのは、いくらなんでもひどすぎる」とスポンサーが離れてお蔵入りになるほど、当時の実態をリアルに描いたドキュメンタリーフィルム。
  • 故郷を離れた若者たちの不満や孤独を受け止める形で急成長した新興宗教

 

  • 地方の人口減農村の衰退が始まる。都市と農村の収入格差が2倍に。
  • 生活環境整備を伴わない経済成長。工場付近では8割の子供に呼吸器異常が。
  • 終戦から1964年までに700万人が東京に流入。ライフラインが追いつかず。工場廃液の垂れ流しで悪臭を放つ隅田川。トイレは汲み取り。し尿は東京湾沖に投棄
  • 生活苦に売血に走る人々。輸血用血液の9割が売血で、その2割がウィルスで汚染。使用期限を過ぎた血液は化粧品の原料へ転売

 

  • NHKが1964年6月(開催4ヶ月前)に行なった世論調査で「今年の一番の関心事」に「オリンピック」と答えたのは、わずか2.2%。(笑)
  • 超満員の通勤列車。年間労働時間は今より600時間も多かった。
  • 長時間労働で不在がちの夫に代わって家を守る妻。専業主婦の誕生。

 

  • 東京都知事の号令で、街の浄化活動に200万人が動員
  • オリンピックに向けた「風紀粛清」。傷痍軍人の募金活動も、街を徘徊する若者も排除対象。大会期間中、暴力団組員を地方に所払いするように「警察が要望」。

 

  • 大会の4ヶ月前、「社会の歪みの放置」を記者会見で問い質された当時の池田勇人首相は「最初から“ひずみはいかん”と言われると日本は先進国に行きにくい。“ひずみ”を心配しながらやっていたら成長が伸びない。いつまでたっても先進国の仲間入りができない」と反論。(←ぶっちゃけすぎ…)
  • テレビだけが、華やかな先進国・日本を映す夢の箱。そして始まる東京オリンピック。一気に高まるオリンピック熱。

 

  • 1962年、既に世界一だった日本女子バレーボール。選手はそこで引退をするつもりだったところ「オリンピックでメダルを取れ」という世論(圧力)が発生。開催国特権として女子バレーボールをオリンピックの種目に採用させたJOC
  • 鬼監督・大松の(今から見れば)超スパルタ指導。(←当時の海外メディアは「拷問」と表現)
  • 「(五輪前に選手を)辞めて何が悪いの? そういう自由がなかった」と、当時を振り返る女子バレーボール選手OG。
  • 開会式前日に突然帰国した北朝鮮選手団。これによりバレーボール競技開催の最低参加国数を満たせない事態に。急遽参加を打診された韓国チーム来日は試合当日。(←当時の両国関係はずいぶんと良かったようです)

 

  • そして、なんと会期中に、大会不参加の中国が国内初の核実験を実施、成功。その結果、日本各地の放射能濃度が急激に上昇。(東京100倍、新潟1000倍など)
  • 松本清張は新聞紙面に「中国の核実験の爆発で瞬時にオリンピックが色あせて見えた。正解はひとつでなかったことがわかった。オリンピックがお祭りでしかなかったことも思い知らされた。スタンドは寒かった。場外に出るともっと寒かった」と寄稿。

 

などなど。

 

そして、1964年東京オリンピックをポジティブな空気感で描く『いだてん』とのあまりのギャップの大きさにクラクラしてきたタイミングで、このニュース速報が入ってきたのです。

55年前にオリンピックの空虚さを語った松本清張。昨日からの台風被害の現実。そしてラグビーW杯はベスト8へ。もう、“全部入り”過ぎて、カオスでしかありません…。(テレビ画面を撮影して拝借。怒られるかな…)

 

『東京ブラックホール』の制作陣は、まさかこのオンエア時に「台風災害」やら「ラグビーW杯ベスト8」が重なることまでは、さすがに想定できなかったとは思います。

しかし、少なくとも同じ局内で作っている『いだてん』の展開については、把握しようと思えば当然できたはずです。

で、把握した上でなのかどうかは分かりませんが、結果として『いだてん』の15分後に、次回以降に登場してくる実在の人物も絡めながら、当時の「先進国の仲間入りムーブメント」をディスりまくる形になったのです。

 

私はむしろ、「国民一億が一丸となって東京2020を盛り上げよう!」という一方向になっていない分、NHKさんとしては(結果として)バランスが取れているように思いましたし、「戦後復興期の暗黒面」を新たに知ることもできて、けっこう楽しめました。

ただ、そこに台風とかベスト8が上乗せされてしまい、微熱の体と脳味噌には、若干ツラかったのも事実ではありますが。

 

いずれにせよ、「人々の幸せが伴わない成長とか発展に、意味ってあるんだっけ?」という制作陣の想いを感じさせる番組だったかと思います。

なお、再放送は10月15日の深夜ですので、ご興味があればぜひ。(←って、今晩じゃん…)

 

 

※『東京ブラックホールII 破壊と創造の1964年』の特設ページはこちら。↓

 

※2年前の『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』(1作目)はこちら。↓

 

 

 
 

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