2011年の3月11日は、金曜日でした。
「あと数時間で今週の仕事も終わるし、天気もいいし、さーて終業後はどうすっかなー。そんなことより、昼メシ後の睡魔がピークになってきたなー」
などと思っていた14時46分、東日本全体が大きな地震に襲われました。
社屋内にいた職場の全員が近くの避難指定場所に移動 → そこで1時間ほど待機 → 社屋に戻る → 相次ぐ余震 → 帰宅指示 → でも電車は運転停止 → 徒歩帰宅 → 都心の幹線道路に溢れる徒歩帰宅者 → そんな人達を支えてくれた沿道の飲食店や消防署 → 初めて職場から自宅まで歩ったことで得られた場違いな達成感 → その後も余震でまともに寝られず。
という状態で、私は土曜日の朝を迎えることとなります。
で、この「翌日が土曜日」という点。
「交通機関の復旧も怪しいし、自宅での今後の(泥縄式の)防災準備や情報収集の時間も欲しいし」的な視点で見れば、曜日の巡り合わせとしては実にグッドタイミングだったように思います。
しかし一方で、土曜日・日曜日と二日連続でテレビ報道にたっぷり接する時間を獲得できたがために、報道特番を見続けているうちに気分がどんどん重くなったことも憶えています。
なんせ、NHKは言うに及ばず、民放もCM抜きの特別編成でずーっと震災関連の報道をしていたワケですから。
「相次ぐ余震 → 目を疑う金曜日の津波の中継映像 → 千葉方面の製油所タンクが爆発するなど首都圏にも大きな被害が発生 → 一夜明けた被災地からのヘリ中継で映し出される津波の惨状 → 雲行きが怪しくなる中で“原発はまだ安全”ばかりを強調する専門家の解説 → 計画停電の噂 → そうこうするうち、土曜日の15時過ぎに“原発で爆発?”情報 → 日テレで1号機が爆発する瞬間の映像を放送」
こんなふうに、次々と「事態の悪化」ばかりが報道され続ける土日でしたので、気が滅入らないはずがありません。
かといって「こんな暗いニュースなんか、もういいや。きっと何とかなるでしょ。喫茶店行って一服してくっか!」と割り切ることもできず、とにかく事態の推移を見守る以外に、当時の私にやれることはなかったんじゃないかと思います。
大きな地震だけでなく、その地震によって起きた大津波によって、たくさんの人が犠牲になった上に、原発事故の進展によっては、東日本全体が数十年(何百年かも)に渡って住めなくなるような災害がトリプルで襲ってきたわけでして、当時の「生きた心地がしない日々」は、今こうやって思い出すだけでもかなりシンドかったりします。
せっかくシンドイ気分になったついでに、当時のメールを漁ってみたら、一人の馬鹿野郎(当時の部下ですがw)とこんなやり取りをしていたようです。
部下:
「東電に勤める友人からのメールでは『電力の供給が不安定で今晩(12日)か明日(13日)、停電する可能性が高い』らしいです」「マンションの人は水も止まるので浴槽とかに水を溜めた方がいいです。IHコンロも使えなくなるので食料の確保も必要かも」
「コスモ石油に勤めている方から『製油所火災の影響で千葉や首都圏では、雨に化学薬品が混じる』と予想されているそうです。傘やレインコートの使用をして雨にあたらないようにしたほうがいいです」
「停電」については、メールをもらった段階で既に「計画停電の可能性」が報道されていたので「何を今さら」でしたし、「雨が汚染」については当時からデマのチェーンメールとして認定済みだったように記憶しています。
やがて「原発の爆発映像」が放送されてからも、この馬鹿からのメールが続きます。
部下:
「東電に勤める友人から訂正メールが来て、終日停電ではなく1日あたり三時間程度らしいです。その間はエレベーターとか使えないのでマンションは要注意です」(←ちなみにこいつはマンションから戸建てに引っ越したばかりだったので「自慢か? そんなに戸建てが嬉しいか?」と思ったりしましたがw)
「コスモ石油の人の話は、人づてだったので、デマのようです」(←そんなこと、こっちは最初から分かってるっつーの)
私:
「 どうせなら、その『東電の友人』に福島原発のこと聞いて欲しいよ…。この際、停電ごときはどうでもいいから…」(←要するに私は「東電の友人などと一次情報を装ってるけど、どうせこれも人づてだろ」と踏んで皮肉を言っているわけです)
部下:
「聞いたところ、『担当外でわからない』と言っていました。 知っててもネタがネタだけにコンプラで話せないでしょうね」(←アホくさ…)
私:
「じゃぁ、東電情報、もう要らないや。。。」
部下:
「失礼しました。 月曜日は通常勤務ですよね?」(←これを読んで私はブチ切れます)
私:
「悪いけど、こんな状態で月曜日がどうなるかなんて、わかりません。
会社から連絡が来たら転送します。
申し訳ないけどさ、こういう緊急時に、ニュース見てれば分かる話とかチェーンメールとおんなじ内容を読むのも返事するのも辛いので、ちょっと遠慮してください。
大きなお世話ですが、他にも送っているなら、控えたほうがいいんじゃないすか?
いろんな気持ちで今回の惨事に接してる人がいるので。
以上、東北に親戚を持つ◯◯(←私の名前)より。部下:
「本当に申し訳ありませんでした。チェーンのつもりはないのですが、聞いた内容をそのままお伝えしていました。配慮が足りずに反省しています」
まぁ、本人も悪気はなかったんでしょうけど、いい歳こいたオッサンが、こんな非常時に、伝聞推定情報を咀嚼もせずにそのまま他人に伝え、結果的にチェーンメールに加担してしまうのって、正直みっともないと思いますし、「こういう時にこそ、人間の本性とか品性が垣間見えるもんなんだな」と痛感した次第です。
ということで、間もなく14時46分。
合掌。
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