こんな「太陽の塔」の映画でした。

私が、大阪万博記念公園に残された「太陽の塔」を偏愛しているのは、以前の投稿からもお分かりいただけるかと思います。

で、太陽の塔を愛するが余り、先週から公開されているドキュメンタリー映画『太陽の塔を鑑賞してきましたので、今日はその感想など。

映画の基本情報は、こちらをどうぞ。↓

ポイント1:監督は公募。

岡本太郎のパートナーだった岡本敏子の甥で、岡本太郎記念館の館長を務め、さらに本作のエグゼクティブプロデューサーでもある平野暁臣さんの提案により、本作の監督は公募(96人が応募・最終選考に残ったのが6人)の中から選ばれたんだそうです。

その結果、これまで多くのミュージックビデオやCMを手がけた関根光才さんという方が監督をされています。

基本は、岡本太郎や太陽の塔にゆかりのある人・影響を受けた人へのインタビューと、本作用に製作されたフィクションパート(イメージ映像)で構成されている映画ですけれども、インタビュー出演者の人選も、フィクションパートも、いい意味で「クセが強いんじゃ」でありまして、正直予想を裏切られました。

私が何を予想していたかというと、

「ほぼ50年ぶりに塔内展示が復元・公開されたのを記念して、太陽の塔が大阪万博で作られることになったいきさつ

「万博基幹施設プロデューサーだった建築家・丹下健三と、岡本太郎のバトル

「前代未聞な建設風景

「万博閉会後に太陽の塔だけ残されたワケ

「塔内展示施設『生命の樹』の復元と耐震工事の舞台裏

など、つまりは「身近にいた人だからこそ語れる、岡本太郎と太陽の塔にまつわる秘話集」のような内容を勝手にイメージしていたのです。

もちろん、上記の要素も一部盛り込まれていますが、監督の視点はそういうところだけに留まってはいませんでした。

公募の甲斐があって、素晴らしい監督さんが見つかったんだと思います。

ポイント2:太陽の塔の「意味」を見つける映画。

こんな見出しを書くと、なにか陳腐な感じがしますけれども、この映画を私なりに一言で表現するとしたら、やはり、

「太陽の塔が、50年前に作られた意味。現代に存在している意味。未来に向けてこれからも残され続ける意味

を探り出す映画なんだと思います。

それらの「意味」を明らかにしていくために、本作では、美術関係者だけでなく、宗教・建築・民俗学・文芸・哲学・考古学など、様々なフィールドで活躍している人々がインタビュー出演しています。

そして、それらインタビューを通して「進歩と調和」「異物感」「贈与論」「低次唯物論」「縄文」「神話」「曼荼羅」などのキーワードが登場します。

まぁ、学者先生も多いので、多少難しい言い回しが出てくるのはご愛嬌ですが、どの出演者も「岡本太郎、そして太陽の塔が提示する『宇宙観』『生命観』『芸術観』」について誠実に語っているので、見ていて心地よかったです。(心地が良過ぎて、頭に入ってこない瞬間もあったほどです。(^_^;))

こういう映画を鑑賞したあとは、やはり自分も感化されてしまい、

自分自身の『宇宙観』『生命観』『芸術観』が問われているんだろうなぁ」

という気分になってくるわけですが、太陽の塔の、あのフォルムを見ているうちに、そんな傲慢な問いかけもいつの間にか寛大受容できてしまい、「太陽の塔の前では、素直になれる自分」に驚いたりもしています。

荒野に立つ「太陽の塔」。「人類がいなくなってもなお、人類が存在した証を残そうとしている」みたいで、ちょっとゾクッとします。「人類の供養塔」みたいな。。。

余談1:「明日の神話」に「描き足し」をしたアーティストが出てきます。

岡本太郎の「明日の神話」という作品(というか巨大壁画)が、渋谷マークシティに恒久設置されていますが、これは太陽の塔と同時制作されていて、「太陽の塔と対をなす作品」として見なされているそうです。

で、この壁画が「水爆炸裂の瞬間」をモチーフとしていることもあってか、福島第一原発事故の数十日後に、事故を連想させる絵がベニヤ板に描かれ、壁画の右下隅に貼り付けられるという出来事がありました。

で、それを実行した「Chim↑Pom(チム↑ポム)」というアーティスト集団もインタビュー出演しています。

本作に登場しているということは、岡本太郎記念館サイドとも、ある意味「和解」できているということなのでしょう。よかったです。

鑑賞後、速攻で「明日の神話」を見に行きました。右下隅の無地のグレー部分に「描き足されたベニヤ板」が貼り付けられていました。それにしても、我ながらひどいカメラアングルですね…。

余談2:太陽の塔の「設計担当者」も出てきます。

インタビューで登場した瞬間、「え? 設計担当? 設計したのは岡本太郎でしょ?」と思いましたが、冷静に考えれば高さ70メートルもある巨大建造物なのですから、精密な設計図が必要なわけで、それを作図するのは岡本太郎の役目なはずがありません。

ということで、彼が作った彫刻を1センチ単位で輪切りにして、それをもとにして精密な図面を起こしたという方が登場してきます。

その方が言うには、

「社寺仏閣の屋根などに見られる反り(そり)とは違って、太陽の塔の曲線は図面上美しくなかった

そうです。w

また、太陽の塔の表面のコンクリート・モルタル吹付けを担当された人も登場し、

グロテスクだと思った」

みたいなことをおっしゃってました。

当時の建築現場に携わった方には、どうもあまり評判が良くないようです。(^_^;)

ということで、鑑賞後は、おおむね満足感に浸れる映画でした。

あえて注文をつけるとすれば、「多くの人に見てもらうことを考えたら、もうちょっとポップさがあってもよかったかな」ということぐらいです。

最後に、太陽の塔に敬意を評して、5月に初訪問した際の写真を再掲します。

著名な文化人なのに、ひたすら「かっちょいー!」とか「カワイイ!」とかしか言わないインタビューが1人あるだけでも…。