ドラマにおける“リアリティ”と“スタイリッシュ”。【「大豆田とわ子と三人の元夫」の感想】

ドラマにおける“リアリティ”と“スタイリッシュ”。【「大豆田とわ子と三人の元夫」の感想】 by konmaru
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2021年4〜6月期は、テレビ各局のドラマが佳作ぞろいだったと思いますが、私にとってはフジテレビ系(制作はカンテレさん)『大豆田とわ子と三人の元夫』がダントツで楽しめました。

昨日、最終回を迎えましたが、わりと最近まで撮影をしていたようなので、コロナ禍の過酷な状況の中で無事に作り終えたスタッフやキャストの皆さんに、「まずはお疲れさまでした」と申し上げたいと思います。

以前から坂元裕二さん脚本のドラマは注目されていたようなんですが、私がここまでキチンと見たのはこの作品が初めてでして、「あぁ、もっと前からキャッチアップしとけばよかったなぁ」という気分だったりもしています。

「しゃれた会話劇」と一言で表現するにはもったいなさすぎる、実に複層的で軽快かつドラマチックな作品でした。

 

 

脚本の良さ”とか“キャスト(特に松たか子さん)の演技力・魅力”とか“使用される楽曲のクオリティ”以外でこの『大豆田とわ子と三人の元夫』の魅力を私なりに挙げるとすれば、「リアリティのあるスタイリッシュ感」みたいなところかと思います。

 

おしゃれななんだけど、温かみや雑然感のあるオフィス。

こだわりの家具や調理器具や雑貨が置いてあるけど、高級感というよりは彼女が気持ち良く暮らすために考え抜かれたかのような大豆田の自宅内装。

そのくせ、網戸が外れやすかったり、お風呂の給湯の調子が悪かったり、雑な収納のせいで頭上のキャビネットから食材が降ってきたり。

専門性の高い仕事で一定程度の社会的評価は受けてはいるものの、どこかで何かがちょっとずつ“欠落”している大豆田や三人の元夫たち。

気の利いた例え話の応酬ができる言語能力を持ち合わせつつ、いざとなると感情が先立ってただうろたえたり戸惑うだけの彼女と彼ら。

 

見るもの聞くものの一々が「あるある・わかるわかる」と「おしゃれ・イケてる」の間を、さらには「声を出すほど笑える」と「泣かせやがって…」の間を行き来するようなものばかりで、ちょっと表現が変ですが、「居心地の良い生活感&雑然感が堪能できるヒューマンドラマ」だったと思います。

1980年代の業界&恋愛系のトレンディドラマを通過してきた自分としては、ぶっちゃけ隔世の感ありまくりなのですが、いかがでしょうか。>ご同輩

 

 

あと、これは“スタイリッシュ”とは関係しないと思いますが、「劇中で使われるスマホの画面やインターフェイスが、実在の商品(iPhone)やサービス(LINEとか)のものがそのまんま使われている」のは、少なくともリアリティの面では有効だったんじゃないでしょうか。

これによって、ある種“大人のおとぎ話”のようなストーリーに、我々の実生活の一断面と感じさせるリアリティを与え、妙な浮世離れを起こさせない効果をもたらしていたと思います。

多くのドラマでは、“架空のサーチエンジンやSNSのロゴやインターフェイス”をわざわざ作って登場させたりしていますけど、そういうのって、見ていてもやっぱり嘘っぽさを感じるんですよね。架空だから当然ですが。

 

 

逆に、「これが今どきの“リアリティ”なのかぁ」と思い知らされたのは、劇中にテレビ(モニター)がほとんど登場しなかった点です。

例えば、大豆田の自宅リビングルームにテレビは一応置いてはありますが、私の記憶の範囲で言えば、餃子パーティーの際に「一瞬スイッチオン → 大音量で即オフ。でもモニター画面は映されず」というシーンで登場したぐらいだと思います。

さらに、登場人物たちはニュースですらネットで見ることが多く、「生活者と社会の接点は、もはやテレビじゃないのだ。これが今どきのリアリティなのだ」と言われているような気がしたほどです。

 

そんなテレビ(しかも旧来からの地上波テレビ局)が、こんな素敵なドラマを提供してくれたことをどう受け止めたらいいのか、いささか複雑な心境ではあります。

決して“高視聴率”ではなかったようですが、こういうコンテンツを作ってくれているうちは、旧来地上波テレビにもまだまだ期待できるんじゃないでしょうか。

 

ということで、楽しませていただきました。ごちそうさまでした。

(余談ですが、当ドラマのサントラ版をスマホで聴きながら散歩すると、早朝ラジオ体操に向かったり買い物とか街ぶらを楽しむ大豆田とわ子の気分が味わえます。w)

 

 

【参考】

  • カンテレさんの『大豆田とわ子と三人の元夫』の公式ページ。↓
  • FODさんの『大豆田とわ子と三人の元夫』の動画配信ページ。↓

 

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