昨日のFIFAワールドカップ ロシア大会のグループH予選リーグ「日本 vs ポーランド戦」ですが、せっかくの機会なので映画館でのパブリックビューイング(PV)に行くことにしました。
試合内容も含めて予想以上に面白かったので、ご報告します。
ちなみに昨日の記事は、↓これです。
1:映画館でのPVは、かなり快適だった
席は全席指定ですし、飲食もできますし、何より巨大スクリーンだけあって、自宅やその辺のバーにあるテレビでは味わえないど迫力のサッカー観戦が楽しめました。
何よりも、映画館は空調がバッチリ効いているのが最高です。
(ただし、私は映画館に到着するまでで汗だくになっていましたがw)
2:PVは、サッカーファン(国際試合ファン)の“世論”が分かって面白かった
自宅で1人でテレビ観戦していても、今のプレーがOKだったのかNGだったのか、よく分からないことが多かったので、サッカーの「盛り上がりどころ」が実感できたのが大変面白かったです。
私のようなサッカーに詳しくない人間が、単独でテレビ観戦していると、どうしても実況や解説者のコメントに影響されながら試合展開を追うことになりがちです。
しかしPVですと、「良いプレー・下手なプレー・惜しいシーン・ヤバい展開」など、私が気づくよりも前に「まわりのサッカーファン」のリアクションがそれらの端緒を教えてくれます。
「ほほぉ、今のセットプレーは確かに惜しかったけど、その起点になったのは、相手チームのあのファールだったんだな」「こういうプレーを讃えるべきなんだな」などと、大変勉強させていただきました。
3:サッカーファンが入れるツッコミが面白かった
3戦目の昨日の試合では、特に前半においてゴールキーパーの川島選手のファインセーブがいくつかありました。
彼は1戦目・2戦目でいくつかの失敗をしていたらしいのですが、ファンの皆さんは、そんな過去も踏まえた上で、
「ここで川島にボールを戻すかーっ!? これ、取れんの!? 取れんの!? おー、取ったぁ!」
「今日の川島、半端ないって!w」
などと、いい感じのツッコミを入れながら楽しんでいて、同じ空間を共有していた私も楽しめました。
また、前半の終盤頃だったと思いますが、プレーの谷間で槙野選手がボトルの水を口に流し込み、(飲むというより)連続的に口の中を潤してすぐに吐き出すというシーンが映し出されたのですが、私と席が近かったファンの中から、
「マーライオンかよっ w」
というツッコミ発言がありまして、いたく笑わせていただきました。
4:試合展開が面白かった
「日本がポーランドに勝つか引き分ければ、日本は自力で予選リーグを突破できる。
もし負けた場合、同時進行しているセネガルvsコロンビア戦の結果によって日本の運命が左右される。
とりわけ、両国が引き分けた場合は、日本は確実に敗退する」
という程度の事前情報しか持ち合わせていない中、後半戦になって「ポーランドが1点先制。しかも別会場のセネガルvsコロンビア戦は0対0のまま」という、まさに日本の敗退が濃厚となった際のPV会場内のハラハラ感は、たまらないものでした。
実にいい緊張感を味わえました。
しかも、その後に「コロンビアが1点先制。セネガルよりも日本の方が『フェアプレーポイント』(要するに反則の数や警告など)が少ないため、このままで終了すれば日本は決勝トーナメントに進出できる」という事態となり、これまた会場中が息を飲んで見守ることに。
さらにさらに、同点に持ち込もうと無理な攻撃をしてポーランドに逆襲されたり、ラフプレーを取られてイエローカードや一発退場を食らったりすると、今度こそ後がなくなってしまうため、残り数分ぐらいになってから、「1点ビハインドなのに、味方同士でボールを回し合って時間を稼ぎ、これ以上の失点を防ぎつつ、無理な攻撃もしない作戦」に切り替えた日本チームの動きと、それを見てどよめくPV会場。
というように、実に面白い試合展開だったと思います。
そもそも、これまでに「点数をリードしている側が時間稼ぎをする」のは見たことがありますが、「リードされている側が時間稼ぎをする」のを初めて見させてもらいましたので、大変新鮮でした。
結果、「上記の事情から、日本は時間稼ぎ」をし、「リードしているポーランドも時間稼ぎをする」という、「あれれ、公式戦の途中で、両チームが一緒になってドリブルの練習でも始めたか?」みたいな貴重なシーンを拝むこともでき、本当にいい体験ができました。
これは皮肉でなく、本当にそう思っています。
5:ルールが分かって面白かった
おそらく、今日以降「フェアプレーポイント」とか「時間稼ぎ」というワードが世間を駆け巡るんだと思われますが、「勝ち点が日本とセネガルは同じ・得失点差も同じ・総得点もいっしょ・しかも直接対決は引き分け」という特殊なケースだと、「フェアプレーポイント数で優劣が決まる」というルールの存在を、私は全く知りませんでした。
それはおそらく大半のサッカーファン(国際試合ファン)も同様ではないでしょうか。
もっと言えば、テレビのデータ放送画面やwebニュースなどで表示される「各チームの成績比較表」に「フェアプレーポイントの欄」が用意されていないところから想像すると、試合を伝えるメディア側も、こんな展開になって、フェアプレーポイントでの比較が必要になる事態など、想定していなかったのでしょう。
そのくらい、珍しいルールの存在を知ることができて、ちょっと得した気分だったりします。
ちなみに「フェアプレーポイントまで一緒の場合」は、「抽選で順位が決まる」らしいです。
つまり、「運にまかせる」わけです。
ということで、最後の感想に移ります。
6:「運にかけた西野監督」は、名将だと思った
西野監督は、
「ムリな攻撃をして同点に持ち込まなくていい」
「フェアプレーポイントではセネガルに勝っている」
「そのかわり、ポーランドに絶対追加点を与えるな」
「こっちの試合と向こうの試合の両方がこのまま終われば、予選リーグを突破できる」
「このまま終わらせろ。無理するな」
というような指示を出したそうで、この指示が「両チームともボール回しで時間を稼ぐ」という珍現象を生むきっかけとなりました。
しかし、これは「同時進行していたセネガルvsコロンビア戦において、コロンビアが1点を守りきり、その後にセネガルが同点に追いついたりしない」ことが大前提の作戦でした。
つまり西野監督は、日本の予選リーグ突破を「コロンビアがセネガルから逃げ切る」ことに賭けたのです。
これに対して、ネットや(国内外の)メディアからは「茶番」「勝ちにいかなかった」「他力本願」「正々堂々とは程遠い」「それこそフェアプレーじゃない」などの批判も出ているようです。
試合会場ではブーイングも起きたそうですけど、ちなみにPV会場ではブーイングというよりは、
「え〜… セネガルが得点入れちゃったらパーじゃんよ〜」
という、ため息交じりで不安感たっぷりのどよめきは起きていました。
いずれにしても。
西野監督は、日本がポーランドに1点先制され、同時進行の別試合が「同点からコロンビアの1点先制」に動いた時から、運をコロンビアに任せたのです。
そして、おそらくこれは単なる神頼みではなく、何らかのデータから「コロンビアが、このままセネガルに勝つ確率が高い」という判断をした上での「運まかせ」だったのでしょう。
これは、率直言って、スゴいと思います。
並みの監督じゃ、できないんじゃないでしょうか。
ワールドカップ直前に解任された外国人監督が「並み」かどうかは知りませんが、急遽就任することになった(就任させられた)監督が、自分の試合のみならず他チームの試合状況を逐次チェックし、残り数分のところで作戦を変更し、試合には負けたものの、当初からの「決勝トーナメント進出」という目標を達成してくれたのです。
本当に素晴らしいことだと思います。
これが「潔くない」というのであれば、ほぼ全試合において実践されている「いい年した大人が、大げさに転んで、大げさに痛みをアピールして、ファールを取ってやろう」という行動だって、かなり「潔くない」ように、私には思えます。
「他力本願」という意味で言えば、よく見聞きする「予選リーグ突破の条件は、こっちの試合で日本が勝ち、さらに得失点差で日本を上回っているチョメチョメ国が、あっちの試合で何点差以上で負けてくれること」という試合だって、十分に他力本願の要素を含んでいるんじゃないでしょうか。
「全力で戦ってない」という批判についても敢えて反論すれば、
「ショートプログラムで首位に立った日本の◯◯君は、2位との点差が◯点あるから、フリーでは無理してむずかしい4回転ループを飛ばなくても、フリーの演技後半に集中させた他のジャンプだけをすべて確実に決めれば優勝できる」
という状況の時に「いや、ケガを押してでも全力で4回転ループを飛ぶべきだ。これまでオリンピックで成功させた人はいないのだから」と言うのと同じぐらいに変な批判のように感じます。
そもそも、スポーツにおけるルールの決め方自体が、かなり恣意的だったりしますよね。
「スキージャンプにおけるスキー板の長さ基準の変更」や「水泳におけるバサロキック泳法の制限」など、「特定の国(わりとアジア系だったりしますが)が強くなってくると、その国の選手が用いていた用具や競技スタイルに制約が入る」という噂があるように、ルール自体は変幻自在なものなのでしょうから、それを前提として、そのルールの中で、「違反ではないプレー」を積み重ねて先のレベルへと進んでいくしかないと思うのですが、なぜそれが批判の対象になるのか、本当に不思議です。
最後にちょっと脱線しますが、どうせそれだけ融通無碍に変えられるルールなんだとしたら、いっそのこと、
「『ラフプレーされて痛いよ〜。ファール取ってよ〜』というアピールを行なう際には、オペラの歴史が長いイタリアと、シェークスピア演劇のふるさとであるイングランドの2チームについてのみ、卓越した演技力を封印すべく、顔は無表情でなければいけない。
なお、両チームが対戦する時は、どちらが痛がるかを抽選で決める」
というルールに変更してほしかったりします。
とにもかくにも、面白くて貴重な試合をPV体験させていただきました。
予選リーグ突破、おめでとうございます。>西野ジャパン
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