四国・関西方面を直撃した台風21号によって、同地方、とりわけ大都市である大阪において大きな被害が発生しました。被災された方々には、お見舞い申し上げます。
強風による各種建造物の破損や車両転倒、高波による冠水など、各地で多くの被害が出たわけですが、とりわけ関西空港での被害はかなり深刻なようにお見受けしました。
滑走路やターミナルの冠水は、数日も経てば水もひいていくでしょうけれど、タンカーの接触事故によって一つしかない連絡橋が破損したため、人工島上に建設されたこの空港が、長期間にわたり「陸の孤島」と化してしまう危険性が出てきたようです。
いくら滑走路やターミナルの機能が復旧したとしても、乗客・乗員をはじめとする人間がここに行き来できないとなると、空港としてはその間、死んだも同然でしょう。
一刻も早い連絡橋の被害調査と復旧、そして「陸の孤島」からの脱却をお祈りします。
で、「関空が『陸の孤島』になった」報道に際して、各方面から、
「何言ってんの? 関空は人工島なんだから、もとから『島』でしょ。『陸』じゃないでしょ」
というツッコミが多数入っているようです。
そんな指摘を受けてなのか、「陸の孤島」から単なる「孤島」へと表現を改めたメディアもあるようです。
気になったので、ネット上の辞書で調べてみたところ、「陸の孤島」には、
「交通の便が悪すぎて、周囲から隔絶して孤立している場所」
という意味があるようですが、とくだん「島ではないのに」というような場所を限定する説明は含まれていませんでした。
ただ、わざわざ「陸の(孤島)」と言っているのですから、実際の島に向けて「陸の孤島」呼ばわりするのは、やはり違和感はありますよね。
せっかくなので、これまでどんな空港が「陸の孤島」と呼ばれてきたのか、ちょっと調べてみました。
まずは、意外にも「成田空港」から。
以下の方のブログによると、かつて成田空港に大雪が降った際、電車・バスがすべて運休となり、タクシーも全然来なかったという事態に遭遇されたそうで、これを指して「陸の孤島」と表現なさっています。
成田ですら、こうなのですから、どの地方空港が「陸の孤島」と化しても不思議はなさそうです。
次は、北海道の「新千歳空港」です。
ここは、本来雪に強い空港のはずですが、以下のブログでは「50年ぶりの大雪で、札幌⇄新千歳間の交通機関がやばくなり、『陸の孤島』になりかけた新千歳と悪戦苦闘」なさった様子が写真付きで紹介されています。
続いて「広島空港」。
今年夏の豪雨の際に、「陸の孤島」になりかけたようです。
かつて私も利用したことがありますが、広島市内中心部から50kmほど離れているそうで、孤島状態にならずとも、正直、あまり再訪したい空港ではないです。
そして、「茨城空港」です。
ここは、天候不順などに全く関係なく、民間供用される前の「航空自衛隊百里基地」の頃から、勤務する自衛官に「陸の孤島」と呼ばれていた場所だそうです。(こちらを参照→2.2 民間空港としての諸課題)
以下のブログ主さんも、「陸の孤島」を認めた上で、「茨城空港のいいところ」をたくさん探していらっしゃいます。
こうやってみてみると、平常時から交通の便が悪くて孤立している、いわば生粋の「陸の孤島」もあれば、今回の「関西空港」のように、悪天候などによって交通アクセスが遮断されてしまった、いわば突発的な「陸の孤島」もあるわけで、後者に対しては同情的なまなざしが向けられる一方、前者(生粋の「陸の孤島」)については、どこか「嘲笑的・侮蔑的・ローカル差別的」なトーンで語られることが多いような感じがします。
たとえば、Yahoo!知恵袋において「陸の孤島」で検索してみると、
「あそこは陸の孤島ですか?」
「陸の孤島とは何県ですか?」
「あっちとこっち、どっちが陸の孤島感ありますか?」
みたいな質問が大半だったりするわけです。
世界に開かれた日本の玄関である成田空港ですら、多少雪が降った程度で公共交通機関が麻痺して「陸の孤島」になるのですから、日本中が「陸の孤島」になり得る素地を持ち合わせていると考えるべきであって、
「オレの出身地の方が都会だ」
「いや、お前の地元を通る新幹線はフル規格じゃないだろ」
みたいな「目くそ鼻くそを笑う」的、かつ非生産的な潰し合いは、そろそろやめた方がいいのではないでしょうか。
そういう観点でみると、Googleさんにおける以下のような「検索候補」表示にも、微妙な香ばしさを感じます。
ちなみに、Googleさんには、不適切な検索候補を報告する機能もしっかり用意されています。
「陸の孤島」って、意外と根深い問題かもしれません。
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