自分が使用している商品やサービスが、世間でも話題になることがありますが、その話題のされ方が好意的なものであると、まるで自分が褒められたかのような錯覚に陥ります。
さらにそれがテレビで話題になるレベルだと、あたかも自分がテレビにでも出たかのような大錯覚を起こしたりすることもあります。(それがありがたいかどうかは別ですが)
で、本題のテレビ東京『カンブリア宮殿』です。
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/
この番組は、世の中でヒットしたり話題になった商品・サービスを手がける企業の経営者をスタジオに呼んで、村上龍さんと小池栄子さんがトークするという番組です。
基本、「紆余曲折はあったけど、こんなに人気がある、こんなにいい会社、経営者も魅力的」というふうに好意的に取り上げられますので、その会社や商品のファンは見ていて良い気分になれますし、新しいファン獲得にも大いに貢献しているものと思われます。
今週の放送では、バーミキュラという鋳物ホーロー鍋を製造販売している愛知ドビー社が取り上げられました。
このバーミキュラというホーロー鍋は、鍋と蓋の間に隙間が空かないように加工されているため、加熱中に素材の味が蒸気とともに逃げ出すことなく、美味しい無水調理ができるとされています。
実際、番組では野菜などの食材だけを鍋に投入し、水は一切入れていないのに、加熱して1時間も経つと鍋の中には食材からの水分がたっぷり溜まっていて、美味しそうな煮込み料理が出来上がることを紹介しておりました。
鍋の特性から、もともとバーミキュラはご飯を炊くのにも向いているのですが、火加減の調整が難しいという課題がありました。
それを「専用のIHヒーターと鍋をセットにする」という方法で解決した「バーミキュラライスポット」という商品も、新たに販売されているそうです。
確かに、炊き上がったご飯は、とてもウマそうでした。
まどろっこしいので、さっさと白状します。
前振りでとっくにお気づきでしょうが、実は私、この「ライスポット」の愛用者なのです。(なんと、メインMCの村上さんも利用しているそうです)
この鍋でやることは、専用のカップできちんと計った米をザルで簡単に洗った後、これまた専用のカップできちんと計った水とともに鍋に投入し、タッチ式のボタンでセットしてやるだけです。
まぁ、これだけでは他社の炊飯器と何も変わりませんが、約1時間後に出来上がるご飯は、これまで私が食べてきた中では、最高にホカホカ・ツヤツヤ・モチモチ・ウマウマなものだと断言できます。(個人の感想です)
この「ライスポット」、通常のバーミキュラの鋳物ホーロー鍋としても使えますから、当然ながら無水調理も可能です。
しかも、「ライスポット」の実態は「鋳物ホーロー鍋 プラス 専用のIHヒーター」ですので、火加減や加熱時間の調整は、全部IHヒーターにおまかせできてしまうのです。
よって、蓋を開けると美味しいミネストローネ、熱々のシチュー、野菜の甘みが満ちているカレー、均一に火の通ったジューシーなローストビーフといった料理たちと対面できるというワケです。
加えていうと、「1℃刻みの保温機能(1分刻みで最長6時間のタイマー内蔵)」が付いているので、低温調理とか自家製ヨーグルトづくりにも向いています。(最近の私は、ご飯よりもヨーグルトづくりが増えてきました)
番組のラスト(編集後記)の中で、村上さんはこの鍋についてこんなふうに評していました。
レシピの種類が、鍋が持つ可能性にまだ追いついていない。
さすがユーザーさんだけあって、実感がこもっています。私も全く同感です。
というか、私の場合、最近料理のレパートリーがすっかり固定化してしまい、レシピの種類にすら追いつけていません。(^_^;)
さて、これほどまでに愛用しているバーミキュラ製品ですが、開発までの道のりは決して平坦なものではなかったようです。
経営者(兄の社長と弟の副社長)が言うには、鋳物鍋とホーロー加工の両立、鍋と蓋の密閉加工などの課題を克服することに予想外の時間を要し、眠れない日が何日も続いたそうです。
しかも、予約注文を受け付けた後で本格生産を中断せざるを得ない事態に見舞われ、「注文が来てるのに、モノが全然出来てない」という、商売をやったことのある人なら誰もがゾッとするような経験もしていたとのこと。
先祖が創業した町工場。
繊維産業の衰退とともに、各種部品の下請製造へ。
海外部品メーカーとのコスト競争とリーマンショック。
自社が持つ製造技術を武器に、新たなチャレンジ開始。
「部品」ではなく「最終製品」を作って売っていく決意。
先行する海外メーカーの存在と差別化戦略。
想定以上に高かった技術的ハードルと、乗り越えるための苦闘。
そして克服。
兄弟・家族の絆。
そして、次なる挑戦へ。
こんな愛知ドビー社さんの波乱万丈過ぎるストーリーを、番組ではドラマ仕立てで再現していましたが、ここだけはちょっといただけませんでした。
その再現ドラマのテイストが、案の定というべきでしょうか、TBS日曜劇場『陸王』を意識しまくったものになっていたからです。
気持ちは分かりますが、安易すぎるような気がします。
『陸王』は、老舗町工場の足袋屋が陸上競技用のシューズを作る話でしたから、製品の良さは主に「着用したアスリートの記録(タイムや順位)」で示されていました。
陸上競技の特性や競技人口を考えれば、ユーザーが感じる履き心地・着用感のような「主観」よりも「客観的な記録」で訴求するほうが分かりやすかったのでしょう。
一方、『バーミキュラ』の成功ぶりを訴求できる最大かつ最良のポイントは、「味という主観」になりますが、料理人口は陸上競技人口の比ではありません。
誰もが使う調理鍋のサクセスストーリーは、『陸王』よりももっと多くの人から共感を呼べるんじゃないかと思います。
このネタで連続ドラマを作れば『陸王』よりも面白いものになるような気がしたのですが、「1時間番組内の再現ドラマで処理しておしまい」ではあまりにももったいないです。
愛用者の贔屓目が多分に入ってしまいましたが、テレビ東京さんは、他局の手垢がつく前に、ぜひとも『鍋王』でも『鍋キング』でも構いませんので、バーミキュラを題材にちゃんとしたドラマを作ってみてほしいなぁと、思います。
自局の『カンブリア宮殿』がやってしまった再現ドラマを、「ついた手垢」としてカウントするかどうかは微妙なところではありますが。
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