ルノーさん・日産さん・三菱自動車さんのトップを務める(務めていた)カルロス・ゴーン容疑者から逮捕されてから1週間が経ちました。
この間、各種報道によって、
「ゴーン容疑者が、どんなふうに会社の金を不正に使ったり、私腹を肥やしたりしてきたのか」
が少しずつ明らかになってきました。
さらに、
「『ゴーン容疑者個人の不正と逮捕』自体は単なるとっかかりであって、『ルノー主導による日産との経営統合をめぐる争い(ひいては日仏両国の主導権争い)』こそが、この事件の本質・核心なのだ」
という報道も目にするようになってきました。
前者の論調でいえば、
「行きつけの焼き鳥屋に家族で来た時の支払いは、だいたい1万数千円程度であって、とても庶民的な人だった(あるいは自腹の時には安く済ませるタイプだった)」
とか、
「外出先で飲み水を買う時にも、会社の経費で買わせていた」
などと、妙にみみっちいエピソードも目にするようになってきましたので、そろそろネタ切れなのかなぁ、と思ったりもします。
一方、後者の「ルノーと日産の統合をめぐる主導権争い」という論調については、事件のバックボーンとして分からなくはありません。
ただ、今回の逮捕劇が巷間言われている通り、「ルノー(さらにはその筆頭株主であるフランス政府)の主導で合併・統合されることに危機感をおぼえた日産側のクーデター」なのだとしたら、ゴーンさんを排除するとなぜ合併・統合を回避できたことになるのかが、よく分かりません。
フランス政府の意向まで絡んでいるとしたら、あちら側は、ゴーンさんの逮捕ごときで経営統合をあきらめたりしないんじゃないかという気がします。
さらにいえば、今回は「幸いにして」ゴーンさんの悪行があったからよかったものの、もし仮にゴーンさんが清廉潔白で質素倹約を旨とする人だったら、今回のクーデターのネタが存在しなかったことになります。
それでも「合併はイヤだ!このタイミングで阻止しないと取り返しがつかなくなる!」と日産側が思っていたとしたら、フランス側を揺さぶるネタとして使える何かが、他にあったのでしょうか。
「他になかったからこそ『ゴーン会長は金に汚い』というスキャンダラスなネタにすがるしかなかったんじゃないのか」という気がしてしょうがありません。
願わくば、この先「ゴーン容疑者の悪行はただの前菜で、メインディッシュはこっちです」という話が出てくることを期待したいものです。
(そうでないと、最終的に日産はホントにルノーのものになっちゃうような気が…)
さて、逮捕後の報道量が多すぎて、事件の背景がむしろ分かりにくくなった面もありますし、誰の解説を参考にすればいいのかも判断しづらくなってしまった昨今。
こんな時、私がよくやるのは「大事件の発生前(今回でいえば逮捕の前)に期限を絞ってググってみる」ことです。
たとえば、Google上で「日産 ルノー 統合 阻止」というキーワードを入力し、「ツール」で期間指定を「2018年11月18日より前」として検索すると、マスメディアや世間が逮捕をきっかけに大騒ぎを始める前からこの問題に着目していた人たちの記事が読めます。
この条件でヒットしたページの中で、面白かったものをいくつかご紹介しておきます。(単純に、Googleさんの表示順です。w)
まずは、『日産がルノーの経営完全統合から逃れる「唯一の手段」とは』と題する記事。(2018年3月13日掲載)
「再び日産が経営危機に陥り、ルノーに共倒れを心配させ、日産株を手放させる」という荒技を紹介しています。
もちろん、その副作用についても触れてますが。
続いて、『日産とルノーの経営統合問題に苦慮するカルロス・ゴーン』。(2018年7月23日掲載)
「これまでのゴーンさんの各種発言から、彼が経営統合をどう考えているのか」を読み解こうという記事です。
さらには『ゴーン続投は日産・ルノーの経営統合の布石か? 仏政府介入に反発強める日産・経産省』。(2018年3月20日掲載)
日産とルノーの経営統合の動きが活発化している中、政府もマスコミも「森友問題」にかかりっきりになっていて、「これでいいのか、しかし?」という筆者の嘆きが聞こえてくるような記事です。
最後は、言わずと知れた大前研一さんによる『「日産・ルノー経営統合説」浮上で問われる重大疑問』。(2018年5月22日掲載)
「日産は、ルノー株を買い増して、フランス政府の思惑を阻止すべき。さもないと日産はホントにフランスのものになる」と警鐘を鳴らしてます。
これからも出てくるであろうゴーンさんの「みみっちいエピソード」や「日産の株価動向」に一喜一憂する前に、ぜひ「事件発覚前」の情報にも接することをオススメします。
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