昨夜、前身番組から数えれば30年間にわたって続いてきたフジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした』というバラエティが終了しました。
とんねるずファンの人、ファンではなくても長年この番組を見続けてきた人、テレビをつけたときに映っていれば見てきた人、「食わず嫌い王決定戦」など特定コーナーを楽しみにしていた人、大笑いしながら視聴して日頃のストレスや鬱憤を晴らしてきた人など、30年間もやっていればいろんな人がいたと思います。
一方、とんねるずの悪ノリぶりに付いていけなかった人、近年の視聴率推移からとんねるず(もしくはこの番組)のパワーダウンを揶揄した人、自分の好きなタレントやアーティストがパロディの対象となり腹を立てた人、セクシャルマイノリティへの差別・偏見を助長したとして抗議した人、それらに謝罪した人など、これまた30年間もやっていれば、いろんな人がいろんな反応をしてきたことと思います。
サラリーマンでもOLでも、自営業者でも公務員でも、公務員でも学者でも、一度始めた仕事を30年間も続けるというのは並大抵の努力でできることではありません。
30年間といったら、大学を卒業して22歳で就職した人は52歳になっているほどの長さです。
生まれたての赤ちゃんは、当たり前ですが30歳になっているわけです。
ということは、「番組開始時には独身だったけど、今では小さな孫と一緒に見てますよ」ぐらいの視聴者がいても不思議ではありません。
視聴者同様、出演者やスタッフにおいても、30年間という時間は流れていきましたから、初回から関わってきた人、配置換えなどで離れて行った人、希望が叶って途中参加した人など、さぞや多くのドラマが生まれたのではないでしょうか。
とりわけ、様々な賛否の声を集め、かつ物議を醸しながらも、フジテレビのゴールデンタイムで30年間にわたって冠番組に出演し続けてきたとんねるずさん両名の感慨は、我々の想像を絶するほどのものだと思います。
そういうこともあってでしょうか、最終回のエンディングで、とんねるずさんは持ち歌の『情けねえ』を、歌詞を一部変更しながら歌い上げました。
いわく、
「バラエティを滅ぼすなよ」
「フジテレビをおちょくるなよ」
だそうです。
こう歌いたくなる気持ちは、前述の通り痛いほど分かるのですが、このフレーズに主語がないので、聴いていてちょっと居心地が悪くなったのも事実です。
お二人は、一体誰に対して「バラエティを滅ぼすな・フジテレビをおちょくるな」と言っているのでしょうか。
スポンサー? フジテレビの幹部? 他局? 他媒体? それとも番組から離れて行った視聴者? あるいはコンプライアンスばかりが叫ばれるような「時代」に対して? ひょっとして、それら全部まとめてでしょうか?
主語はともかく、熱いメッセージだったと思います。
「あぁ、自分の大事にしていたアレやコレがなくなっていく・・・」と落胆・失望・悲観することは誰にでもあることで、不肖・この私においても「喪失」と向き合ってきた回数は一度や二度ではすみません。(とんねるずさんの番組のような規模や影響力とはまるで比べ物にはなりませんが)
そんな時、私は矢野顕子さんの「変わるし」という曲を聴いて心の平静を取り戻すことが多いです。
歌詞をダイレクトでコピペするのは憚れるので、エッセンスをかいつまんでみます。
親や猫にも寿命はあるし、お気に入りの店だっていつかは閉店するんだけど、あきらめられないよね。
あんなに好きだった人も、今となってはどうでもよくなったけど、ごめん、あきらめてね。
頑張って育てても、そのうち子供は家を出てくしさ、楽しい飲み食いや、そのお金だっていつかはなくなるけど、楽しかったよ。ありがとよ。
目の前にあるものなんて、いずれ変わる。
自分が欲しいものも、いつの間にか変わっていく。
でも、変わるからこそ泣いたことも忘れられるよ。
だから、笑って見送るもんね。
歌詞の内容は結構シリアスなのですが、曲調もアレンジも実にイカしておりまして、聴いているうちに体がリズムにノッてきます。
「世の中のあれやこれやに、そんなにこだわってどうするよ? 諸行無常なんだからなるようになるさ、ケセラセラ〜」というヤケクソな人生ソングではなく、「変わっていくものを、笑って感謝して見送ろう。そして前を向こう」という肯定的な曲になっていますので、「ちょっとした喪失感」に苛(さいな)まれている方にオススメできると思います。
↓ここの41秒目ぐらいから始まる曲です。
↓こちらで試聴・購入も可能です。
ということで、とんねるずさん・番組スタッフのみなさん、お疲れ様でした。
コメント