今日の閣議で、テレビ局の女性社員に対するセクハラ問題を報じられた財務省事務次官の辞任が正式に了承されたそうです。
このニュースに関連して、自民党の代議士によるツイートが炎上する騒動も起きました。
各種報道によると、以下のような流れになるようです。
今月20日の午前、事務次官の「セクハラ発言問題」を受けて、野党議員が国会内の会合で「#Me Too」と書かれた紙を掲げながら、抗議の意思を表明。
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同じく20日、自民党の長尾敬衆議院議員は自身のツイッターで、「#Me Too」と書いた紙を掲げて抗議する女性議員らについて、
「セクハラはあってはなりません。
こちらの方々は、少なくとも私にとって、セクハラとは縁遠い方々です。
私は皆さんに、絶対セクハラは致しませんことを、宣言致します!」
とツイート。
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このツイートに対して、批判が相次ぎ、長尾議員は22日夜にツイートを削除。
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あわせて自身のブログで
「私の発言がセクハラにあたるというご指摘を真摯(しんし)に受け止め、気分を害された方々に、写真に掲載されている女性議員の皆様に、心からおわびを申し上げたい」
「猛省しております」
と謝罪。
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女性議員ならびに世間の批判は収まらず。 ←今ここ。
有権者の内のほぼ半数は女性で占められていると思いますが、それぞれの政治信条とか支持政党に関係なく、女性有権者のほぼ全員を敵に回すような「セクハラの上塗り」ツイートをしてしまったのですから、政治家としての(それ以前に社会人としての)センスを疑わざるを得ないと思います。
しかも、長尾議員のブログにおける謝罪投稿を見てみたところ、
審議を拒否される同時刻、Me Tooと訴える議員諸氏の姿に、憤りを禁じ得ず、「無縁な方々」との表現をしてしまったことを猛省しております。
財務省等のセクハラ問題は看過できません。同時に、タクシー等でのセクハラ、不倫疑惑、女性議員に対する暴力疑惑なども同様だという怒りがありました。
これら行為に目を瞑るということは、「身内のセクハラ問題には無関心」であるということ、これと、複数の男性議員が含まれていましたので「無縁な方々」と関連付けて投稿したというのが真意です。
と、あれこれとエクスキューズをくっつけた謝罪だったことが分かりました。
エクスキューズ部分の論旨を分かりやすく、かつ本人の心の声を忖度しながら整理すると、およそ以下のようになると思います。
「国会議員の本分であるはずの審議を拒否っといて、その同じ時間帯にMe Tooとか言ってアピール大会してんじゃねーよ」
「お前ら野党議員だって、セクハラ・不倫・暴力とか、いろいろやらかしといて、いったいどの口でMe Tooっつってんだよ?」
「身内のセクハラには目をつむってもいいってか?」
「そもそも男の議員も一緒になってMe Tooって、何だよそれ。お前らには関係ねーじゃん。だから『無縁だろ』っつってやったんだよ」
「お詫びと真意」というタイトルの投稿でしたから、どう考えてもこっち側が「真意」なのでしょう。
「俺から見たら、あんた達にはセクハラしたくなるような魅力もないし〜」と受けとめられてもしょうがないツイートをしてしまったのですから、ここはグッとこらえて淡々とお詫びに徹しておけばよかったと思うのですが、まぁ、それだけいろいろと腹に据えかねていたのでしょう。
真意の表明としては、ずいぶんと不器用だなぁと感じてしまいました。
そもそも論として、野党側の「#Me Too」抗議にもかなりの不器用さというか、違和感をおぼえました。
「#MeToo」に関して私の理解を申し上げると、「昨年の10月に、ハリウッドの映画プロデューサーによるセクハラ疑惑報道があり、それを受けてある女優が、同様の被害を受けたことのある女性たちに対して『me tooと声を上げよう』とツイッターで呼びかけた」のが運動の発端だったと思います。
つまり私は、「#MeToo」というハッシュタグを掲げて声を上げる(べきな)のは、本来は「セクハラ被害を受けた人たち」なんだと思っていたのです。
にも関わらず野党議員の皆さんは、「#Me Too」という紙を掲げていたものの「私はこういう被害にあった」ということを何も語らなかったので、「全然Me Too(私もです)になっていないよなぁ」という点が不思議でたまらなかったわけです。
もしかすると、そこにいた野党議員の全員が「私にもこんな被害経験がある」と表明したものの、それが報道では割愛されただけなのかもしれません。
だとしたら「#MeToo」運動のそもそもを理解していないのはメディア側ということになりますが。
言うまでもありませんが、男女の別なくセクハラ行為に異議申し立てをすること自体に問題などありませんし、国民の代表たる国会議員が先頭に立って反セクハラの世論を形成しようとするのは、むしろ善だとも言えるでしょう。
しかし、自らに「Me Too(私にもあるのよ)」という経験がない、あるいは経験はあってもそれを表明する気がないのであれば、掲げるべきは「#You Too(あなたにもセクハラされた経験あるでしょ? あなたも言ってよ)」だったのではないかと思います。
さらに言えば「#You Too」であれば「あなたにも被害経験あるでしょ?」だけでなく「あなたにも加害経験あるんじゃない? 認めなさいよ」という意味も込めることができそうなので、こっちの方がよっぽどふさわしかったのではないかと思います。
野党議員の方々は昨日、衆議院第一議員会館で開かれた「セクハラ被害者バッシングを許さない4.23緊急院内集会」において、他の参加者とともに「#With You」と書かれた紙も掲げていたようです。
これには「(被害経験のある)あなたに寄り添います」という思いが含められているのだと推測しますが、抗議のホントの目的が「政権批判・妥当安倍内閣」なのであれば、やはり「お前もやっただろ! お前も認めろ!」という攻撃性を備えた「#You Too」のほうがしっくりくるんじゃないでしょうか。
大きなお世話でしょうが。
いずれにせよ、今回のセクハラ騒動が単なる政争の具に終わらず、実際のセクハラ行為撲滅につながることを祈らずにはいられません。
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