先日、前職関連のツテで、
「時事ネタの講演会があるけど、聴きにいってみたら? 平日の午後だけど、どうせヒマにしてるんでしょ?」
というお誘いをいただき、本日、キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)さんが主催する、同研究所研究主幹の宮家邦彦さんの講演会を聴講してきました。
テーマは、
「2020年、日本外交・安全保障政策への提言」
〜勢い、偶然、判断ミスの世界に如何に対応するか〜
というものです。
宮家さんは元外交官(=元官僚)で、中東をはじめ世界各国の政治・軍事情勢に精通しており、テレビ朝日の朝の情報番組『グッド!モーニング』で水曜日コメンテーターを務めたりもしていらっしゃるので、ご存知の方も多いんじゃないでしょうか。
内容は、
「冷戦後、日本を取り巻く国際政治・経済環境が激変する中、日本の外交、安全保障政策のあるべき姿だけでなく、それを阻む要因をいかに克服するか」
というようなもので、対アメリカ、対韓国・北朝鮮、対中国、対中東などの国ごとに「相手国の大局はこうなっていて、現状の課題や問題点はこうで、それに対する私の政策提言はこうだ」という感じで、ところどころジョークも交えて2時間たっぷりお話しされておりました。
個人的に興味深かった発言を、備忘メモがわりにピックアップしておきます。(意訳込みです)
- 「トランプ大統領のせいでアメリカが自国第一主義、ボピュリズム社会になった」と言われるが、そのきっかけを作ったのは彼の前に8年間も政権に就いていたオバマさんである。
- オバマさんは、何の戦略もないままに冷戦の枠組みを壊し、力の真空地帯を生んだだけ。
- 日本・アメリカ・韓国による米韓日同盟の維持は、もうムリ。
- 朝鮮半島が「自由で、民主的で、独立した形で、統一」するのであれば、中国・ロシアの防波堤になってくれるので日本の利益になる可能性あり。ただし“非核化”もしてほしい。難しいだろうけど…。
- アメリカ・北朝鮮の交渉は、絶対に決裂する。それに備えて北東アジアの核抑止強化が大事になるので、日本は「非核三原則の部分的見直し」を議論すべき。
- これからも日米海洋同盟は維持すべきだが、防衛費は大幅に増やさざるを得ないだろう。
全ての発言に賛同できたわけではありませんが、「理念より現実。国際関係は力の関係」という持論をお持ちらしい宮家さんの考えがよく伝わってきました。
そんなことよりも、実は今日の講演会の途中、私は猛烈なデジャブに襲われてしまい、そっちのほうが気になってしょうがありませんでした。
それは、宮家さんがちょいちょい発した、
「ここは、オフレコですよ」
「これは、うーん、言っちゃうと怒られるかなぁ」
「普通なら、絶対言えないことですけどね」
「ホントにここだけの話にしてほしいんですけど」
などのフレーズです。
これって、10数年前に前職関連で某省庁の政策課長(=現役官僚)の講演を聴きに行った際に、その課長さんがことあるごとに繰り返したフレーズと全く同じなんですよね。
宮家さんは既に官僚ではありませんから、「うちの省を代表した意見でなく、私個人の意見として聞いてください」と繰り返していた現役課長さんほどガードは固くありませんでしたが、それでも「これはホントは大っぴらにできないのですが」と言いながら、結局全部バラしちゃうというその話法が、当時の政策課長さんと全く同じで、正直、ちょっと耳障りではありました。
このようなエクスキューズは、つまるところ、
「はい、ここからが大事なところですよ! 聞き逃したらもったいないですよ! いいこと言いますよ! 面白いですよ!」
という露払い宣言なのであって、そのあとにマジでNGなことなど、絶対に言わないんだと思います。
おそらく、そのくらいの話芸ができないと、官僚など務まらないのかもしれません。
そう言えば、私のサラリーマン時代にも、
「業界トップの、あの◯◯さんがだぜ、昨日みたいな平場の席で、あえて業界2位のA社の業績について『ここだけですよ』とことわりながらも触れたことが重要なんだよ。そこが昨日のパネルディスカッションの本質なんだよ。それが分からないようじゃ、お前もまだまだだよなぁ」
みたいな叱咤をいただいたことがあります。
「言葉のウラを読む」とか「聴きどころのサインを逃さない」とか、そういう情報分析文化って、今にして思えばメンドくさかったなぁ、という記憶までよみがえってきた、そんな講演会ではありました。
余談ですが、会場(一橋大学一橋講堂)の喫煙所があまりにも立派で感激しましたので、写真を載せてみます。
愛煙家にとっては、最強のイベントスペースかもしれません。
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