かねてから噂の「接触確認アプリ」が、いよいよ本日リリースされるらしいです。
一言でいうと「スマートフォンの近接通信機能(ブルートゥース)を利用して、互いに分からな いようプライバシーを確保して、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性について通知を受けることができる」というアプリだそうです。
興味があったので、厚労省の専用ページにアクセスしてみましたが、「アプリの概要(6月12日現在)」(←PDFが開きます)を読む限り、非常に微妙な仕上がりになっている気がします。
微妙1:国民の6割以上に利用してもらわないと効果を発揮しない。
これは上記の厚労省PDFからではなく、政府外から(例えばこういうWebマガジンサイトなど)から発せられている声でして、「そもそもスマホ普及率が6割強ぐらいなんで、ほぼ全てのスマホユーザーが利用しないと威力を発揮しないことになる。これって無理じゃね?」みたいな指摘です。
これはインストールさえ進めば解決する話なので、ここではこれ以上触れません。(ただ、以下の「微妙な点」がある限り、普及は難しいと思ってます)
微妙2:「陽性になった」ことを自分でアプリに登録しなければいけない。
「症状が出た」 → 「保健所などでPCR検査。その際、『新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(アプリ外)』に電話番号かメアドを登録」 → 「検査結果が陽性だったら、登録された電話番号のSMS、もしくはメアド宛に『処理番号』が送られてくる」 → 「受け取った『処理番号』を、陽性者自らが接触確認アプリに入力」 → 「“14日以内にこの陽性者と接触した他ユーザー(ブルートゥースで近くにいたと判定された人たち)”に対して『陽性者との接触があった』旨が通知される」
ざっくり書くと、こんなフローになるようです。
「アプリユーザーの中で『この人が陽性になった』ということを、誰がどうやって他ユーザーに通知するのかがずっと気になっていたのですが、要するに陽性者本人が「私、コロナに感染しました」と宣言することになるわけです。
もちろん、匿名化は図られるそうですし、保健所などから受け取る「処理番号」を入力しないと“陽性宣言”できないので、悪ふざけはできないようになってはいるのですが、自分が陽性であることを知り、そこから「隔離だ、家族も検査だ、会社に連絡だ、実家に子供を預けるぞ」などのあれこれに巻き込まれ出す人が、忘れることなくきちんと“陽性宣言”できるのかどうかが心配です。
それに、「処理番号を入れて“陽性宣言”」する前に、アプリ上であらためて「14日以内にあなたと接触状態にあった人たちに、あなたの個人情報を伏せた形で『陽性者と接触していた』旨を通知します。いいですね?」と同意を求められるようなインターフェイスになっているようです。
それ自体は丁寧でけっこうなことなんですけど、ここで念押しされると、怖気づいて結局“陽性宣言”しない人が続出するんじゃないでしょうか。
微妙3:このアプリを「無症状の感染者を発見する」ために使うつもりはないらしい。
「アプリの概要(6月12日現在)」(←PDFが開きます)の4ページ目によると、「あなたは、陽性者と接触していましたよ」と通知された人には、次のようなフローが表示されていくようです。
- 本人の「症状の有無」を入力
↓ - 「本人に症状あり」なら“帰国者・接触者外来”の速やかな予約と受診を案内
↓ - 「本人に症状なし」だが、「身の回りに感染者や、それらしい症状者がいる」なら“帰国者・接触者外来”の速やかな予約と受診を案内
↓ - 「本人に症状なし」で、かつ「身の回りに感染者や、それらしい症状者もいない」なら“14日間は体調変化に注意してね。そのうち症状が出たら、またアプリから“症状の有無”を入力してね”とメッセージが出ておしまい
昨今「無症状の感染者が多いらしい」とか「発症前でも他人にウィルス感染させるらしい」ことなどが次々と報告されているので、私はてっきり「このアプリをインストールして、『あなたは陽性者と○日前に接触してますよ』と表示されたら、症状があろうがなかろうが“即検査”を受けられるんだろう」と思っていましたし、それならばこの通知アプリもわりと普及するんじゃないかと想像しておりました。
しかし、実態は相変わらず「陽性者と接触していたことは通知してやるけど、無症状者まで検査するつもりはないから、よろしく」ということらしいです。
以上の「微妙3点」のうち、この3つめが致命的にダメなような気がします。
ということで、今日の夕方ぐらいにはLINEの「首相官邸」アカウントあたりから「アプリのリリース開始。ぜひインストールを」などの告知が来るんでしょうけど、私はちょっと様子見することになると思います。
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