本日未明に発生した北海道の大地震で、道内全域が停電してしまい、世耕弘成経済産業大臣が「全域の復旧には少なくとも1週間かかる」との見通しを示したことを、日本経済新聞さんが報じています。
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記事によると、揺れの激しかった地域だけでなく、道内全域が停電した理由について、北海道電力は以下のような説明をしているそうです。
「震源の近くにある苫東厚真発電所(厚真町)が地震で緊急停止した」
「この発電所は165万kwの発電能力を持つ、道内最大の火力発電所である」
「地震発生当時、道内の使用電力の半分を、ここが供給していた」
「この発電所の停止によって、電力の需給バランスが大きく崩れてしまった」
のだそうです。
さらに記事では、需給バランスが崩れるとなぜ停電するのかについても以下のように解説しています。
「電力は常に発電量と使用量を一致させておかないと、周波数(東日本は50Hzです)が安定しない」
「周波数が安定しないと、発電機や電気機器が壊れたり、最悪の場合は大規模停電が起きる危険がある」
「通常、北海道電力は道内全域で電力需給バランスを調整しているが、地震によって道内最大の火力発電所が停止した」
「そのため電力供給量が需要に対して大きく減少し、連鎖的に他の発電所も停止した」(記事では「停止させた」とあります)
ということらしいです。
本来であれば、地震で停止した苫東厚真発電所を補うべく、他の発電所で発電量を増やせればよかったのでしょうが、いかんせん、ダウンしたのが「北海道の使用電力の半分を供給していた発電所」だったため、需給バランスを調整しきれなかったということなのでしょう。
さらに記事では、
「火力発電所を動かすためにも電力が要る」
「今後は水力発電所を動かして、火力発電所に送電して、発電再開を目指す」
「ただ、発電が再開されても送電線の被害状況によっては復旧に時間を要する可能性がある」
としています。
走行しながらバッテリーを充電している自動車においても、止まっているエンジンをかける際にはバッテリーから電気をもらわないといけませんから、「発電所だって、よそからの電気が必要」なのも分からないではありません。
でも、火力発電所にだって自前の「ディーゼル自家発電機」ぐらいあるんじゃないでしょうか。
それとも、ディーゼル発電機が用意されているのは「外部電源が喪失しても原子炉や使用済み核燃料プールを安全に冷やし続ける必要がある原子力発電所だけ」なのでしょうか?
そのへんがよく分からないところではあります。
【以下、追記】
先ほど日本テレビ『news every』を見ていたら、「(火力発電所は)原発と違い、外部電源がなくなったからといって即安全性に影響するわけではなく、自家発電の備えは必要というわけではなかった(だからこの発電所には自家発電設備はなかった)」旨の解説がありました。
【追記、ここまで】
この停電に関連して、「需給バランス調整や周波数調整を、北海道全体ではなく、いくつかのブロックに分けてやっていれば、全域停電は防げたはず」という声もあがっているようですけど、そのブロック内に限ってみれば「ブロック内すべてが停電する」のでしょうから、同じリスクは残ります。
「それでも、せめて札幌周辺だけは別ブロック」にした方がいいのか、「いやいや、札幌の停電は、北海道全体に与える影響がデカイのだから、札幌もさらにいくつかのブロックに分ける」べきなのか、難しい話になりそうです。
で、日経さんの記事は、以下のような文章で結ばれていました。
「北海道と本州をつなぐ送電線の容量も60万キロワットと道内の電力需要をカバーできるほど確保されていない。
道内の泊原子力発電所(泊村)も運転を停止中で供給力に余裕はない。今回の大規模停電は、一カ所の大規模火力発電所に依存することの脆弱さが浮き彫りになった形だ」
邪推ですが、日経さん(あるいは執筆した記者さん)は、「泊原発を動かしていれば、こんな全域停電は防げたのだ。泊原発を再稼働すべきだ」と暗に(おおっぴらに?)主張したいのかもしれません。
ただ、これって、読みようによっては「北海道の全域停電」を人質にして「原発再稼働」を迫っているようにも思われ、ちょっと薄気味悪い感じがします。
また、記事では「一カ所に依存することの脆弱さ」を訴えていますが、その対象をあえて「火力発電所」に限定しているのも腑に落ちません。
Wikipediaによると、泊原発の発電能力は207万kwで、今回緊急停止した「苫東厚真発電所」の165万kwの1.25倍もあります。
ということは、今回の震源はたまたま火力発電所の近くでしたが、仮に今、泊原発がフル稼働していて、しかもその近くが震源になっていたとしたら、結局同じような停電問題に直面していたんじゃないでしょうか。
しかも、もしそんな事態になっていたら、全域停電に加えて、福島第一原発のような「メルトダウン→放射能汚染」という悪夢のようなオプションまで付いて来ることだって考えられます。
「いやいや、泊原発と苫東厚真発電所の両方が稼働していたら、双方がお互いのバックアップの役目を果たせるので、これほどの全域停電にはならなかったのだ」という理屈もあるのかもしれませんが、だったら、危なっかしい原発じゃなくて、「苫東厚真発電所と同規模の火力発電所をもう一つ作って需給調整する」という手段もあるんじゃないと考える次第です。
(とはいえ、まずは停電の早期解消が先ですが)
原発の話題は、なぜか政治的・信条的対立を生みがちなので、あまりブログなどで書きたくはないのですが、2011年3月11日以降(特に、あの地震発生から1週間)に起きた福島第一原発事故の推移をリアルタイムで見聞きした私としては、あんな怖い思いは二度としたくないというのが正直な気持ちです。
原子力・経済・国際政治の専門家の方々に言わせれば「非合理的・非科学的な考え」なのだと思いますけれど、申し訳ありませんが、「理屈抜きでイヤなものはイヤ」なので、何卒ご容赦ください。
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