前回の貴乃花親方に続き、著名人の引退関連ネタです。
NHKーBSプレミアムで放送されている『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』というドキュメンタリー番組は、ほぼ毎回欠かさず見るようにしています。
で、9月25日のテーマは、『小室哲哉という“革命”~メガヒット連発 その光と影』というものでした。
小室さんは、今年1月の「不倫疑惑報道」をきっかけに、音楽業界からの引退を表明しました。
番組冒頭でも当時の記者会見映像が流れましたが、「光と影」の「影」の部分として「不倫疑惑報道から引退表明記者会見にいたる経緯」について取り上げられたりはしていませんから、その辺を期待して見ていると肩透かしを食らうと思います。
ストーリー構成としては、
「小室哲哉がどのようにして表舞台に登場し、記録と記憶に残る名曲の数々を作ることで絶頂期を迎えたか。そして、その後の低迷や著作権をめぐる詐欺容疑での逮捕・有罪判決・再生」あたりまでの軌跡を追うという感じになっています。
これらのストーリーは、彼の身近にいた複数の関係者たちの証言インタビューで組み立てられていくのですが、
「あんなに有名で光り輝いていた小室さんに、実はそんな歴史があったのか。あの時、そんなことを考えていて、彼の周囲はとんでもないことになっていたんだ」
ということが知れる証言ばかりで、実に興味深く拝見させていただいた次第です。
主な証言インタビューの中から、印象に残ったものだけ、ちょっとご紹介してみます。
まずは、久保こーじさんです。
小室さんが無名な頃から親交があり、共同作業者として長く小室さんを支えた音楽プロデューサーで、ヒットを連発するようになってもひたすら音楽作りに没頭する小室さんの真っすぐな思いを、いつも傍で見ていた方だそうです。
「(小室さんは売れる前から)自分をどう見せるかを常に意識していた」
「(売れてからは)人前で天才を演じるようになっていった」
「(彼には)明確なゴールがないので、どんなにCDが売れても『これでいいや』という感覚がなく、常に『次は、次は』を追いかけていた」
「人の出入りが多いし、情け容赦なく人を変えていった。そこは非情だった」
「(ヒットチャートにランクインできなくなってから)お金がなくなるといろんなところが回らなくなって軋んでくる。そうするとクリエイティブになれない。それでも自分が解決するしかないから辛かったんでしょうね。会いにいっても部屋から出てこなくなった」
「(最近では)『(小室)先生、いつでも辞めるのをやめていいんですよ』と言っている」
小室さんは、かつて雑誌のインタビューで、
「プロのミュージシャンは売れることで自分の好きな音楽ができるようになる。売れる音楽を優先して作らないと駄目だ」
と発言していたそうですが、仕事仲間である久保さんのインタビューを聞いているうちに「結局、小室さんは自分の好きな音楽を作れた時期を持てたのかどうか」が気になりました。
続いて、松村慶子さん。
数々の伝説的なアーティストを手がけた音楽プロデューサーで、TMネットワークのマネンジメントを手がけた会社の社長だそうです。
「(初めて会った)19歳当時、彼はシャイで物静かだった」
「『ディズニーランドのイメージでサウンドを作りたい』と言うなど、自分のサウンドが当時から頭にあった」
「TMNデビューに際して、『これからはシャイじゃダメですよね』と言ってきた」
「数ヶ月のロンドン生活から帰国してきて、『(マネジメント会社の)社長をやりたい』と言ってきたので交代したけれど、潰そうがどうしようが、自分が稼いだ金で作りたいものを作ることについてとやかく言われたくない人なのかと思った」
「上と下の(感情の?)起伏がすごい。全部一人でやるから。(仕事が)大きくなればなるほど、自分一人でやっていると穴が出てくる」
「『変えたい、変えたい、新しく変えたい』という思いが強いので、後ろを振り向かず、周囲の人をどんどん置いて行っちゃう」
「(引退については)作家でアーティストには、引退(という概念)なんかない。一生作品を作れるはず」
小室さんは、シャイなキャラクターを捨て去り、「売れる存在」になるために手段を選ばずバリバリやるタイプだったんでしょうけれど、そんな小室さんのことを、80歳代後半の松村さんが、今でも心から気にかけているのがヒシヒシと伝わってきました。
小室さんには、ぜひとも「親孝行」していただきたいものです。
そして、マーク・パンサーさん。
“小室ブーム”の全盛期、globeのメンバーとして音楽活動を共にした方ですよね。
活動拠点を移したロサンゼルスで彼の自宅に一緒に住んでいたそうです。
「頼まれたらヒット曲にしなきゃいけない。絶頂期のプレッシャーは大変だったと思う」
そんな小室さんは、1997年に、長年所属していたエイベックスとの関係を解消します。
その当時のことを振り返って、エイベックス会長の松浦勝人さんは、
「彼は常に2つの相手を天秤にかけて競わせる。
どっちが自分によくしてくれるか、よくしてくれる方と仕事をするというスタイル。
だから競わされる方は小室さんに身も心も尽くさなければならない。
僕としては、自分のところのアーティストが悲鳴をあげていたら当然守るしかない」
と語ったそうですが、その前後を振り返ってマークさん曰く、
「2000年を過ぎた頃から同居は解消。globeの3人で何かを作るのは消えていった」
「大きな小室ファミリーは、その周縁から崩れていったのではないかと思う」
「その崩れた穴を補強していったのは、彼に一切の異論を挟まずに『小室さま』と言って付き従うような人だった」
「(小室さんは、周囲にいつも)人がいるのが大好きだった。人を観察していろんなことを得るのが好き。人間っぽくて、それを大事にしている」
「(小室さんが起こした著作権売買詐欺事件について)愛してる人たちが側にいないから起きた事件だったのかも。もう少しみんな一緒にいてあげるべきだったのかも。全員の責任」
とのこと。
一時は寝食を共にしていたマークさんだからこそ、そして、小室さんの「絶頂と転落」の両方を間近で見ていたからこそ、彼は言葉を噛みしめるようにしながら話していました。
マークさんは、今でも小室さんの曲を披露するライブを行ない、ステージには「いつ小室さんが来てもいいように、小室さん用のキーボードセット」を用意しているのだそうです。
ちょっと泣けますねぇ…。
ということで、「不倫疑惑と引退会見」あたりの話については、以前ここでも書かせていただいたので、興味があればそちらをご覧いただければ幸いです。
番組の本放送を見逃した方、とりわけ「小室ソング」をカラオケで歌いながら青春を謳歌したような方々は、まずは10月1日(月)の23時45分から予定されている再放送をお見逃しなく。
他にも、多くの貴重な証言が聞けますので、必見です。
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