「嘱託の公務員」【テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』】

日曜日の昼間は、暇に任せてテレビをダラダラ見ることが多いのですが、1月21日にテレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』という番組を眺めていたら、「天皇陛下の退位でどんな時代がやってくる!? SP」なるテーマで議論が交わされていました。
「元号が変わると経済が活性化する」とか「今上陛下退位後のお住まいはどうなる」とか「ご公務はどうする」などの切り口が中心でしたが、その中の「ご公務」のくだりで、八幡和郎さんという方が発した提言に、私は思わずギョッとしてしまいました。

八幡さんの主要な提言に至るまでの流れを私なりに整理すると、こうです。(八幡さんからの解説も一部含まれます)

  • 今上陛下はこれまで公務を増やしてこられた。
  • 陛下は非常に真面目な方で、昭和天皇がおやりになっていない公務もずいぶんとやっていらっしゃる。
  • しかも、公務の中で人と会うにあたり、事前に相手のことについてしっかりと勉強もされている。
  • ご高齢ということもあり、お身体のご負担を考えて周囲の人間が気を使うのだが、真面目な陛下は「待っている人がいるから」と公務を減らすことを嫌がられる。
  • そもそも公務には、国事行為として日本国憲法に定められているもの以外に「これはやる、これはやらない」というような法的根拠がない。
  • そんな中、来たる11月には秋篠宮眞子様がご結婚される予定である。
  • 皇室典範の定めでは「女性皇族は、皇族以外の男子と結婚した場合、皇族ではなくなる」と定められているため、眞子様は公務から離れることになる。
  • 眞子様が昨年行なった公務は130件以上にのぼる。
  • ちなみに、現在皇室は19人。そのうち14人が女性で、さらにそのうちの7人が未婚であり、将来のご結婚とともにさらに公務に携わる方が減っていく可能性がある。さて、どうする?

こんな流れを受けて、“皇室事情に詳しい”と紹介された徳島文理大学教授の八幡和郎さんは、まず天皇陛下の公務のあり方について、

(今上陛下の真面目なご性格から公務ならびに勉強の量が増えてしまったが)それは陛下の個性によるものなので、次の天皇皇后両陛下に同じようにやれと言うのは間違いだと思います。

とコメントしました。

今上両陛下が「国民の象徴」としての務めを果たすべく「国民とともに」とか「開かれた皇室」という考えで公務に向き合ってこられたその方針を、皇位を継がれる皇太子殿下は基本的に踏襲されることが予想できますし、実際これまでにもそのような趣旨のご発言もされています。

“皇室事情に詳しい”八幡さんですから、当然そのことも知っているんだと思いますが、その八幡さんが「公務を増やしてきたのは今上陛下の個性なのだ」と言うにとどまらず、「次(の天皇)も同じようにやれと言うのは間違いだ」とまで言ったワケです。

そもそもこの発言、「“誰が”同じようにやれと言ったのか」がはっきりしないので、聞いていて何とも居心地が悪かったのですが、仮に今上陛下が息子である皇太子殿下に「公務を私と同じようにやれ(踏襲してほしい)」と望んでいることをイメージして言っているのだとしたら、八幡さんは陛下に対して「間違っている」と苦言を呈していることになると思うのですが、そうなのでしょうか。

“皇室事情に詳しい”と、陛下を批判してもいいんでしょうか。

まぁ、憲法では「天皇の地位は、主権者である国民の総意に基づきますよ」とされていますから、国民誰しもが天皇制や皇室への考えを表明しても問題などないのでしょうが、「国民統合の象徴」に対して「間違っている」と言い切れるのって、正直スゴイと思います。

「いったい何様?」感、この上ありません。

もしくは「『次の天皇も同じようにやれ』と言ったのは、今上陛下じゃないです」なのであれば、誰の発言(もしくは主張)なのかが聞きたいところです。

番組ではさらにその後、八幡さんから“皇室の公務”についての提言がありました。

ポイントは以下のようなものでした。

元皇族で民間人になられた方が、引き続き公務をやっていただいても別に支障はない。

その場合は、女性の元皇族・旧宮家も含め、宮内庁の「嘱託」とか、そういう身分できちんと宮内庁が管理する(のがいい)。

戦後、皇籍をはずされた旧皇族の中には、仕事がなくなり生活に困って、ペテン師に利用された人も多かったので、きちんと仕事を差し上げた方がスキャンダルは起こりにくい。

(他の出演者から改めて「身分は準皇族みたいな感じですか?」と問われたのに対して)名目は「宮内庁嘱託」という形で。

結婚したところで、プリンセスはプリンセス。海外では(王室の身分を離れた女性が公務を行なうことに)全然抵抗がない。

だそうです。

私が想像するに、八幡さんの考えのステップは、

皇室全体、とりわけ天皇皇后両陛下が担っている公務は増えすぎているので、もっと減らすべき。
 ↓
両陛下以外の皇室の方々が、その公務を分担していくというのもありうべし。
 ↓
しかし、女性皇族は結婚と同時に“皇族でなくなる”ので、公務の全体量が多少減ったとしてもオーバーフロー気味なのは変わらない。
 ↓
だから、元女性皇族を「宮内庁の嘱託」にして、国事行為とは関係ないレベルの公務を処理していってもらおう。

ということなのだと思います。

市井の庶民に過ぎない私にしてみれば、「だったら、女性皇族はご結婚しても皇室に留まる。その上で、これまで通り公務に当たっていただくほうがよっぽどスッキリするんじゃないか」と思うのですが、「宮内庁の嘱託」と2回も明言するぐらいですから、よく議論になる「女性宮家の創設」につながりかねない動きについては、八幡さんは断固反対しているということなのでしょう。

つまるところ、八幡さんは、

「今上陛下は(国事行為以外の)たいして重要でもない公務を勝手に増やしてしまった。それを女性皇族も含め手分けしてこなしてきたのに、今後女性皇族が結婚するたびに、公務の受け皿が減っちゃうじゃないか」

「それでも公務を減らせないというなら、オーバーフローしている公務を結婚したあとにもやってもらえばいいじゃん」

「だからといって、女性皇族が結婚後も皇室に残るのは認めないよ。だって、そこを認めちゃうと『男子皇族で皇統を維持してきた万世一系の天皇制』の伝統が壊れるじゃん」

「考えてもみなよ。結婚しても仮に眞子様が皇室に残るってことは、眞子様が当主になって、これまでに前例のない女性宮家を作るってことだよ。つまり、結婚相手である民間人の小室圭さんっていう人が宮家に入るってことだよ」

「そして、もしその宮家で親王(男の子)が生まれたら、その子を将来天皇にするかどうかって話につながっちゃうじゃん」

「だから、どうしても継続したい公務があるんだったら、『宮内庁の嘱託職員』にでもなって、好きなだけ公務やれば? それなら認めてやってもいいけど」

「とにかく、これまで男性皇族から生まれた男の子供(男系男子)だけで繋いできた天皇制が崩れるのは絶対ダメ。女性皇族が生んだ男の子供(女系男子)が天皇になっちゃったら絶対ダメ! ウキーッ!(とは叫んでませんが)」

というような主張をお持ちなのだと思われます。

八幡さんは絶対口にはしないと思いますが、女性皇族と結婚する男性民間人に対しては、「どこの馬の骨なんだよ」という感情を抱いているのかもしれません。

それは眞子様のご婚約相手である小室さんに対してだけの感情ということではなく、「皇族でない男性の血が混じる皇位継承」をもたらすような可能性のすべてが「馬の骨」に見えているんだと想像します。

と思ったのもつかの間、八幡さんの執筆した文章をいくつかググってみたら、「そもそも小室さんって、眞子様の結婚相手としてどうなのよ?」という意見を実はお持ちだったようです。

小室さんの職歴や収入などを引き合いに出しながら、「いかに結婚相手としてふさわしくないか」という、まるで興信所のような書きっぷりです。(詳しくはこちら)

そもそも今の皇室制度においては、皇族以外の男性と結婚する女性は皇室から抜けるしかないのですから、眞子様がどんな男性を伴侶とするか、そしてそのお相手のことを、ご家族である秋篠宮家の方々や両陛下がどう承認して祝福するかなど、八幡さんがあれこれ思い悩む必要などないと思うのですが、それでもなお「この相手、どうなのよ?」と疑義を唱えるのだとすれば、そこはもう、番組冒頭で八幡さん自らが指摘したように、「戦後に皇籍をはずされ、仕事がなくなり生活に困った旧宮家の方々が、ペテン師に利用されたのと同じような事態に、結婚後の小室家が陥ってしまうのではないか?」ということを心配しているんでしょう、きっと。

そんな心配もあればこそ、「宮内庁の嘱託にして、仕事と金を与えて管理すべし」というような主張になっていくのかもしれません。

八幡さんは、小室さんのことをペテン師呼ばわりしているわけではありません。

でも、「いずれ生活に困窮し、あれこれトラブルに巻き込まれるような人なのではないか」と明らかに疑っています。

善意に解釈すれば、「皇室周辺でのスキャンダルを予防したい。天皇制の権威を護りたい」ということかもしれませんけど、根っこに「女系の天皇など言うに及ばず、それにつながりかねない女性宮家だって絶対認めない」という思いが強すぎて、なにか、とても気持ちの悪い解決手段が提示されているような気がします。

だって、眞子様や、さらにはそれに続く未婚の女性皇族方が結婚したら「宮内庁の嘱託公務員として雇用しろ」って話ですから…。

これでは、今の天皇家からはもとより、「国民の総意」を形成している一般大衆からの支持も得にくいんじゃないでしょうか。

日本は言論の自由が保障されていますから、これもひとつの意見ではありますけど。

最後に余談ながら、「宮内庁からの“派遣”」ではなく「宮内庁の“嘱託”」と表現したあたりに、皇室に対する八幡さんなりの気遣い・リスペクトぶりが垣間見えるような気がしました。

追伸

録画したこの番組をもう一回おさらい視聴していたら、八幡さん関連でもう1箇所、不思議な発言が。

「皇族の公務をどうするか」の一環で、八幡さんいわく、

(公務とどう向き合うかについては、天皇や皇族方の)お気持ちが大事なんだけれども、あくまでもこれは憲法の建前からいうと、内閣がやっぱり主導権を持って決めるべき問題だし、それ以外の人が決める問題じゃない。

だそうです。

ちなみに、憲法では「天皇が国事行為をするときは内閣の助言と承認がいるよ。で、内閣が責任を持つよ」と定められていますが、それ以外の公務については規定はありません。

「内閣の助言と承認」をどう拡大解釈すれば「内閣が主導権を持つ」という具合に読めるのか、本当に不思議です。

さらに、「決めちゃいけない『それ以外の人』」の中に誰が含まれるんでしょうか。

官僚は決めていい人?

内閣に属さない政治家は決めちゃダメな人?

陛下をはじめとする皇室の方々は、まさか「それ以外の人」じゃないですよね?

内閣が主導権を持つというのは、皇族方に対して「この公務をやって下さい」とか「そんな公務はやらなくていいです」とコントロールする(できる)ということかと思いますが、ホントにそれでいいんでしょうか。

こういうのって、“天皇の政治利用”につながるんじゃないでしょうか。

あまり考えたくありませんが、その時の政権が、

「◯◯共和国に原発買ってもらったり新幹線買ってもらったりして欲しいからさ、いっちょ2泊3日ぐらいで歴訪してもらって、酒でも飲んで仲良くなって来てよ。あの国、うちの国民から結構嫌われてるから、今のままだといろいろやりにくくってさ。 えっ? 親交が深い△△王国の式典と日程がぶつかる? ごめん、こっちのほうが大事なんで。じゃ、もろもろよろしく〜!」

とオファー(という名の命令)できるということになるんですよね、たぶん。

いいんでしょうか、それで。

八幡さんの考えは、どこまでいっても私の常識とは噛み合わないみたいです。