今回の話は題名の通り。
時は2008年元日、場所はタナロット寺院というバリ島随一の寺院、かつ夕日が美しいことで知られている景勝地。被害者はミチヨではなく、しっかり者で有名な息子。
スリに遭うとは、一生の不覚。。。
というわけで話を前回の続きに戻して。
元々お願いしていたガイドさんの都合が悪くなってしまい、一旦はタナロット寺院行きを断念したものの、なんとなく諦めきれずに、ホテルスタッフのスギ君に相談したところ、彼が快くアテンドしてくれることになったのだ。
スギ君は、当時まだ20代そこそこだったと思う。ヤンキー風金髪のド派手な外見ではあるが、日本語ペラペラだし礼儀正しいし、とても好青年。滞在中に何度か顔を合わせるうちに仲良くなったのだった。
スギ君の車に揺られ、道々、一面に広がる素晴らしい田園風景を見て大盛り上がりしながら、30分くらいでタナロット寺院に到着。
寺院の前に広がる参道?にはたくさんの土産物店が並ぶ。
正月ということで観光客で大混雑していたが、人混み大好きなミチヨは
「あら〜賑やかじゃないの!わくわくするわ」
と大喜び。
ここでもミチヨの買い物魂に火がつきそうになるのを必死で消火しつつ、参道を抜けて海岸に出ると、このとおり。
雨季にも関わらず、美しい夕日が拝めた。
スギ君曰く、雨季の夕方はほぼ毎日雲りか雨なので、夕日が見られるというのはかなりラッキーなんだそう。そんな話に、こいつぁ正月から縁起が良いね、なんつって盛り上がる能天気な我々。
満ち潮の荒い波が押し寄せる岸壁からは、熱心に祈りを捧げる大勢の人たち。僕も初めて訪れた寺院だったので、こぉりゃスゴいと興奮気味にあちこちを見学。
ミチヨはスギ君をすっかり気に入ってしまい、ツーショット写真を何枚も撮っていた。
そういえば昔、ミチヨがテレビに出ている光GENJIを見て
「なになになに!このかわいい子供らは?!」
と大騒ぎしていたのを思い出した。歳を取ったとはいえ、今でも若い男が好きらしい。
寺院見学を満喫し、帰りがけにガイドのスギ君にジュースでもご馳走しようかなと思って、ふとリュックを見たら、なぜかチャックが開いていた。嫌な予感がして中を確認したら財布がない。
どこを探してもない、ない、ない!!!!!
顔から血の気が引いて、膝はガクガク、口はカラカラ。
思えば、写真を撮ることに熱中しすぎて、リュックを体の前で抱えることを忘れていた。すんごい人混みの中、格好のカモだったことだろう。やってもーた。
慌てふためく僕、不安げな両親に対して、スギ君は次々と冷静なアドバイスをくれた。警察に連れて行ってくれて僕の代わりに状況説明し調書を書いてくれ、そして何度も励ましてくれた。
行きの車の中では一同はしゃぎぱなしだったのに、帰りはしんみり。起きてしまったことは仕方ないので、元日早々、今年一年間の厄払いをしたんだと言い聞かせよう、と強引に結論づける。
車中、スギ君も落ち込んでしまって何度も謝ってくれたが、スギ君は全く悪くない。それどころか「ボクが守ってあげなければいけなかったのに、ゴメンナサイ」を繰り返す彼。
そんなスギ君をみる目が、完全にハートマークのミチヨ。
「チップをたくさんあげなさい!
アタシが金持ってんだから〇〇〇円くらい渡してあげて!」
を何度も繰り返す。あのぉ、スギ君は日本語わかるんだから、そういう生臭い話はスギ君本人の前でしないで欲しいんですけど、と言いたかったが時すでに遅し。
でも、スギ君には心から感謝。
ホテルに戻った後は、国際電話でカードを止める手続きなど。幸いどのカードも使われた形跡は無く、再発行の手続きも一通り終了。
ふと気づけば、この騒動で夕飯を食べていないことに気付く。バリ島最後のディナーだから、嫌なことは忘れて楽しく食事しよー!と、街中の日本食レストランに出かける。
まあまあ楽しく食事をして、部屋のセイフティボックスに残しておいた僕のクレジットカードで支払いをしようとしたら、なんと有効期限が切れていた・・・。
我ながら、どーしよーもないバカ息子。
すると、ミチヨ。
「カネならアタシがたんまり持ってっから安心しなさい」
と肝っ玉かあさんキャラを炸裂させる。
ちなみにミチヨは、食欲、買い物欲と並んで、金銭に対する執着が強いのだが、その話は今後機会があった時にでも。
そしてこの瞬間から、僕とミチヨの立場が逆転。
それまでは、貴重品からは常に目を離すなとか、バックはたすき掛けにして体の前に抱えろとか、散々ミチヨに世話を焼いていた息子だったが、全く立場なし。今思い返してみても、最後の最後で気が緩んだな、と反省。
年に何回か「今日は本当に最悪な日だ」と思うことがあるが、それが何故元日で、しかも楽しいはずの旅の最終日で、しかもバリ島にいる時で、しかも両親をアテンドしている日に、訪れたのか。
はぁぁぁぁぁ〜(涙)
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