ジャニー喜多川氏の性加害調査報告書を読んでみた。

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故・ジャニー喜多川氏が生前、長期間にわたって続けてきた性加害について、再発特別チームによる調査報告書が公開され、昨日記者会見も行われました。

※調査報告書は、今ならここからアクセス可能です。↓
 記者会見の動画(完全版)をながら見しながらざっと読んでみましたけど、(不謹慎かもしれませんが)読み物として面白かったです。

読んでみて、思ったことを備忘メモとしてまとめておきます。

根本原因とされた「ジャニー氏の性嗜好異常」について。

調査報告書の42〜43ページ部分で、以下のように指摘されています。

  • 20歳頃から80歳代半ばまでの間、ジャニー氏による性加害が間断なく頻繁かつ常習的に繰り返された
  • これは、ジャニー氏に顕著な性嗜好異常(パラフィリア)が存在していたことを強く裏付けている。
  • 定義上13歳以下とされる小児性愛に比べ、ジャニー氏に襲われた被害者年齢層の中心は13〜15 歳と若干高めだが、まさに性嗜好異常の一型とみなすことができる。
  • したがって、ジャニーズ Jr.の思春期少年に対して、長年にわたり広範に行われた性加害の根本原因は、ジャニー氏の個人的性癖としての性嗜好異常にほかならない

確かに、同族経営であろうがジャニーズJr.の管理体制が杜撰であろうが、ジャニーさんが「性嗜好異常(パラフィリア)」でさえなければこんな性加害は起きなかったと思います。

これについて、ネット上の一部で「年下好きの同性愛者は異常だというのか!」という感情的な反発や、逆に「それみたことか。やっぱりホモは異常なのだ。『LGBT理解増進』なんか進めたらロクなことにならないぞ!」と増長気味の意見を見かけますが、報告書をよく読めば、どちらの意見も誤解に基づいていることが分かります。

報告書43ページに注釈として、「米国精神医学会DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』では、「性嗜好異常(パラフィリア)という用語は、表現型が正常で、身体的に成熟しており、同意が成立している人間のパートナーとの間で行われる性器の刺激または前戯に対する性的関心を除く、強烈かつ持続的なあらゆる性的関心を意味する」と定義され、その一型に「小児性愛(ペドフィリア)」が含まれている」という記述があります。

また、MSDマニュアル家庭版では「パラフィリアとは、無生物、小児、または合意のない成人に対して、あるいは自分自身やパートナーに対する苦痛屈辱に対して、性的興奮をもたらす常習的で強い空想または行動のこと」と説明されています。

要するに、「同意・合意のないまま自分や相手に苦痛・屈辱を与えて性的興奮するのが異常」なのであり、「ましてや、性的行動に対して同意能力のない小児(少年少女)相手にそんなことをするのが異常なのです」ということでして、いわゆる同性愛を異常視した内容では全くありませんから、このへんはいったん冷静に受けとめた方がよろしいかと思います。
(男女間においても、双方の合意がなければ単なる強姦であり、立派な犯罪ですから、それとおんなじだと思います)
(なお、相手が13歳未満の子供だったり、13歳以上16歳未満の子どもで行為者側が5歳以上年上だと、合意うんぬんに関係なく「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」が成立するそうですから、念のため)

「故人に関する事実認定」について。

調査報告書と記者会見について報じたスポニチさんのこのニュース記事を読んで、いろいろ考えさせられました。↓

この記事では報告書に沿って性加害のポイントを整理しつつ、最後は「ただ、故人のジャニー氏に事件について問うことはできない。客観的評価ができないままのこれほどの詳細な発表が正しかったのかについては疑問が残る」と締めていらっしゃいます。

実際、記者会見の質疑応答でも「ジャニー氏(ならびにメリー氏)も亡くなっているのに、被害者や関係者のヒアリングだけでどうやって事実認定したのか」という質問が何度か発せられていましたし、たしかにこの「死人に口なし」状態での事実認定作業については異議を申し立てよう思えばいくらでも可能なんだとは思います。
おそらくジャニーズのファンの中には「証拠がないから信じられない。信じたくない」と考える人もいらっしゃるでしょうから、この疑念はずっと燻り続けるのかもしれません。

ただ、報告書上の「メリー氏による放置と隠蔽」「事務所の不作為」「ガバナンスの脆弱性」あたりを素直に読めば、「ジャニー氏とメリー氏が生きていたら、この性被害は今なお隠蔽され、マスメディアは沈黙を続けていたに違いない」と容易に想像できるわけです。

「存命中に責任追及してほしかった」とか「亡くなっている人の行動を客観的に評価するのはむずかしい」などの意見のどちらにも共感はしますが、「2人が死んだあとだからこそ、性被害の詳細を明るみに出せた。噂・疑惑の域をようやく脱して事実認定された。だからメディアも取り上げた」というのも厳然とした事実であり、庶民の一人としては「あぁ、タブーってこういうことなんだよなぁ」と改めて恐れ慄いている次第です。

沈黙をやめたマスメディア。

昨日の記者会見を受けて、マスメディアは一斉に報じるとともに、マスメディアの広報部門や情報番組のMCから「メディアとして(あるいは出演者・社員として)重く受けとめる真摯に受け止める。人権侵害はあってはならない。これからも人権重視していく」といったコメントや発言が相次いでいます。

沈黙をやめたのはいいとして、ではマスメディアは今後、ジャニーズ事務所との「取引」をどうする気なのかというあたりも気になります。

メディアのコメント通りだとしたら、人権を侵害し続け、隠蔽し続け、ガバナンスが機能していない企業とは、それらが改善しない限り(あるいは改善が始まらない限り)メディアが商取引を継続できるはずがありません。そしてジャニーズ事務所がその例外となる理由はないと思います。

で、メディアが芸能事務所と商取引をやめるということは、すなわち「所属タレントを出演させない」ということになるはずです。
(出演料は、第一義的にジャニーズ事務所の売上になっているはずなので)

この点については、これまでもMCやコメンテーターが「タレントに罪はない」という調子で擁護するような発言をしてきていますし、今朝も日テレさんの「DayDay.」において、山里亮太さんが「頑張っているアーティストの方が傷つかないようにして頂ければと思う」と発言なさっていました。↓

まぁ、そう言いたくなる気持ちも分からないではありませんが、ではどうやれば彼らを傷つけずにジャニーズ事務所に社会的責任をとってもらえるのか、その具体策が見えてきません。

不祥事の内容にもよりますが、企業の不正が明らかになれば、その企業は営業を自粛し(あるいは営業停止を命令され)、商品の出荷を止め(あるいは納入を拒否され)、何の罪もない現場の従業員や末端の消費者が一時的に不利益を被るのを覚悟の上で経営立て直しに取り組むことは、よくある話です。

それが、「人気アイドルだから、有能だから、努力しているから、大勢のファンがいるから、業界が混乱するから」というような理由で、ジャニーズだけは再建策が具体化しなくても商行為を継続していい、売上を出し続けていいということにはならないと思います。

その意味で、昨日の報告書を受けて、ジャニーズ事務所がどこまでその提言を採用するのかがポイントだと思いますし、その採用レベル次第では「こんなんじゃ、自分の会社のコンプライアンスや人権尊重規範が維持できないよ。さすがにこのままジャニタレを出演させ続けるわけにはいかないよ」とメディアが判断する可能性もあるんじゃないでしょうか。というか、それが普通だと思います。

「ジャニーズ事務所が見習えばいいのに」と思う会社。

かつて巨額の簿外債務を発生させ、損失の隠蔽や先送りを図った結果、自主廃業に追い込まれた山一證券という会社がありまして、就任してから簿外債務の存在を知らされた最後の社長が記者会見で「私ら(経営陣)が悪いんであって、社員は悪くありませんから!」と号泣したことがありました。

ウィキペディアさんからその発言を引用します。

これだけは言いたいのは…私ら(経営陣)が悪いんであって、社員は悪くありませんから!。どうか社員のみなさんに応援をしてやってください、お願いします!

私らが悪いんです。社員は悪くございません‼︎善良で、能力のある、本当に私と一緒になってやろうとして誓った社員の皆に申し訳なく思っています!

ですから…一人でも二人でも、皆さんが力を貸していただいて、再就職できるように、この場を借りまして、私からもお願い致します!

ウィキペディアより

簿外債務について知らない人間の中から社長を選任する」という方針によって、結果的に“最後の社長”という貧乏くじを引かされたにも関わらず、自主廃業会見の場では一切の責任をかぶり、社員たちに詫び、そして「有能な彼らを再就職させてやってくれ」と懇願したわけです。

所属メンバーに非がなく、どんなに有能であっても、所属企業の経営陣が不正を働き、その結果売上が減ったり負債が増えて首が回らなくなれば、会社は潰れてしまいます。

その結果、社員・アーティストの呼び方はともかく、所属メンバーたちは大いに傷つくことになりますが、だからといって所属企業をそのまま放置しておくわけにもいきませんから、普通の経営者は「会社の業務を縮小したり、あるいは最悪は潰した上で、彼らをどう救うか。傷をいかに減らすか」に注力することになるんだと思います。

ちなみに、この山一の社長さんは、「路頭に迷わないよう、社員だけは助けてくれ!」と記者会見の場で懇願しただけでなく、廃業業務の傍ら、自ら社員の履歴書を持って求職活動を行ない、その結果、一般社員に対する世間の同情を大いに集め、全社員が応じても余りあるほどの求人を受けたんだとか。(ウィキペディアより)
これぞ企業のトップ。読んでてちょっとジーンときました。

ひるがえって、ジャニーズ。

再発防止特別チームから、ガバナンス強化策の一環として辞任するよう提言されたジュリー氏に、ここまでする気概があるのかどうか、今後を注目してみたいと思います。

 

以下は、蛇足的な妄想ですが、私としては「ジャニーズ事務所とは完全に経営が分離された『被害者救済のための財団』を作る。全タレントをそこに所属させる。タレント活動によって得られた出演料(売上)は全てこの財団にいったんプールする。ジャニーズ側も一定の基準で算出された“賠償金”をここに納める。これらを被害者救済の原資とし、さらにタレントへのギャラもこの財団から支払う。財団の資産が潤沢になってきたら、人権尊重などの社会貢献活動業界体質改善活動にも金を回す」みたいなスキームがいいんじゃないかと思います。

そうすれば、現役タレントがどんなに活躍してもジャニーズ事務所の儲けにはなりませんし、頑張れば頑張るほど救済も進むのではないかと。

出演料のうち何割を財団が取るかは、現在ジャニーズ事務所が抜いている(受け取っている)マネージメント手数料率と同じにしておけば、とりあえずはタレントも納得するんじゃないでしょうか。

おまけに、ファンもこれまで通りの推し活動ができるわけですから、なんか、丸くおさまる感じがします。

さらに妄想すれば、「財団」の理事長や幹部には、ジャニーズ事務所を出ていった人望ある元アイドルとか、国民的アイドルグループを育て上げたのにメリー氏らに追い出されたとされる敏腕マネージャー女史が就任するのも一案かもしれませんよね。

参考情報。

ジャニーズ事務所さんの公式企業サイト。↓

東洋経済オンラインさんの「ジャニー喜多川氏『性嗜好異常』の特徴と犯罪性〜「パラフィリア症」と呼ばれる疾患で治療が必要だった〜」記事。↓

当ブログのジャニーズ関連の過去記事 その1。↓

その2。↓

その3。↓


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