「クローズアップ現代」の“ジャニーズと性加害問題”特集は、最高で最悪。

「クローズアップ現代」の“ジャニーズと性加害問題”特集は、最高で最悪。 News/報道
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2023年5月17日にNHK総合で放送された「クローズアップ現代」は、「“誰も助けてくれなかった” 告白・ジャニーズと性加害問題」という内容でした。

(放送から1週間はNHKプラスで見逃し配信が見られますので、ぜひどうぞ)

いろいろと考えさせられる番組だったので、備忘メモを兼ねて投稿しておきます。

内容は、これまでの中で最高かも。

ジャニーズ事務所の創業者で元社長のジャニー喜多川氏から性被害を受けたと証言する複数の方々に顔出しのインタビュー取材を行ない、ゴールデンタイムの番組内で「性被害に関する具体的な証言」をストレートに放送したことは、今年で70年を迎えた日本のテレビ業界にとって、実に画期的な出来事だったと思います。

1961年から5年間にわたってNHKが放送した伝説的な生放送バラエティ番組「夢であいましょう」で、(グループとしての)初代ジャニーズがデビューしたということですから、そもそもジャニーズ事務所はその創生期からテレビと共に成長を続けてきたわけです。

その意味では、60年以上にわたって「一蓮托生」「共犯」「癒着」と揶揄されるような関係を続けて来たテレビメディアとジャニーズ事務所のそれぞれに、これまで以上の注目や批判が集まるような内容だったと思います。

まだまだ物足りない面もありますが、それでもNHKが「ジャニーズで活動した元タレントたちの告白本」の表紙の数々を映し、「週刊文春による性的虐待報道を名誉毀損としてジャニーズ側が訴えた裁判の過程で、ジャニー氏の性的虐待が事実認定された形で判決が確定している」件や「その裁判以降にも同様の虐待・加害行為が続いていた」ことなどを報道した事実は極めて重大ではないかと思います。

クロ現では「これからも(この問題に)向き合っていきます」と締めていたので、NHKさんが今後どこまで本気で、かつどういう責任追求と落とし所をめざして報道していくのか、しっかり見ていきたいと思います。

放送のタイミングは最悪。

一方、「なぜ今頃? 後追いにもほどがある」という批判も当然あるわけです。

3月、イギリスの公共放送BBCがこの問題を取り上げたドキュメンタリーを放送。

4月、元ジャニーズJr.の歌手が日本外国特派員協会で名前と顔を出して記者会見し、性暴力を公表。

5月14日、ジャニーズ事務所の現社長が謝罪動画と書面による見解を発表。

で、5月17日、クロ現でようやくこの問題を特集。

という流れなので、誰がどう見ても「まずBBC報道がいわば“外圧”として機能し、加害側・被害側双方の当事者たちの会見・謝罪があって(というか、それを待って)ようやく放送した」という形になっており、公共メディアとして大変にみっともない状態ではないかと思います。

直近だと「旧統一教会問題」に関する報道でも同じようなことが起きていたと考えます。

すなわち、「政界であれ芸能界であれ、そこに関与している多くの人たちは直接間接を問わず悪い噂を見聞きしており、『信者が議員会館をうろついている・信者が秘書をやっている』とか『ジャニー氏がジュニアたちに性的虐待をしたことが裁判で事実認定された』ということをメディア側も半ば常識として知っているのに、キーパーソンが狙撃されたり、海外メディアが動かない限り、自主的には何も報道しない」というのが実態なわけですから、今回のクロ現についても手放しで「よくやった!立派!」という気には全くなれません。

「動かぬ証拠がない限り、報道できない」のかもしれませんが、政治部記者は「なんか怪しい信者が議員会館を闊歩している」のを何度も目撃していたでしょうし、社会部記者なら「ジャニーさんの性加害が裁判で事実認定された」こともとっくに承知しているはずなので、要するに「報道しないことが得になる。報道すると損をする」ということなんだろうなと、いち部外者としては想像するしかないです。

一般的には、それを「タブー」というんだと思います。

人権への配慮・注意喚起について

昨日のクロ現だけでなく、この件を伝えるテレビ番組などでは決まって「今、活躍している所属タレントに対する憶測・誹謗中傷はいけないことです」という注意喚起がされています。

それは当然のことですし、まさに正論だと思います。

ただ、「プライバシーに配慮して第三者委員会は作らないそうだから、報道も慎重にするべきだ」みたいなことになるのだとしたら、個人的には「それでいいんだっけ?」という気持ちになってきます。

再発を防ぐ上でも徹底的な取材で事実を解明し、その上でプライバシーにどう配慮しながら報道するかをしっかり考えればいいだけだと思います。
(法廷で衝立(ついたて)越しに証言してもらうのと同じことではないでしょうか)

 

さらに踏み込んで言ってしまうと、いま現在トップアイドルとして活躍し、ジャニー喜多川氏が逝去した際には大いに感謝の言葉を発したジャニーズのタレントたちの中にも、自分が受けた性被害をなんとか耐えてやり過ごし、仲間への被害に目をつぶり、時には「え?昨日はお前だったの?大変だったなぁ!笑」などと連帯しつつも、親を含む外部にはひたすら口を閉ざし、結果的にメディア露出の機会を与えられ、成功をつかんだ人間が何人かいるのだろうと想像せざるを得ないわけでして、そんな“少年特有のがむしゃらな功名心に基づく性的忍耐競争の勝者たち”については「このまま放置でいいんだっけ?」と思ったりするのですが、どんなもんでしょうか。

数年前にハリウッドでは、女性俳優たちが実名で映画プロデューサーのセクハラを告発した「#MeToo」運動が活発化しましたが、個人的には“ジャニーズ現役トップアイドル”からの勇気ある(当然自発的な)「#俺も」発言を期待したいところではあります。

これは興味本位で期待しているのではなく、そういうことでもないとジャニーズ事務所の“特権的・封建的・利権的・地位濫用的”な企業体質は変わらないんじゃないかと懸念しているからであります。
(現に、数年前には「元SMAPメンバーのテレビ出演をめぐる公取委からの注意」なんて事件もありましたし)

そういう意味では、「同性愛者の創業者社長はもう死んだんだから、性加害の再発なんかあり得ないじゃん」という単純な話じゃないと思っています。

 

これで終わろうと思いましたが、もう一つだけ妄想が膨らみました。

もしかすると、そう遠くない将来に「ジャニーズの現役トップアイドルが勇気ある告白『自分も何度も添い寝された。たくさん触られた。でも性的なレベルに達することはなく、嫌ではなかった。むしろ精神的な博愛を感じた。ますますジャニーさんへの感謝の思いが強まった。だけど、やっちゃいけないことをしたのは悪いこと。ジャニーさんも自分も人間。人間は弱い。弱いからこそ間違う。過ちを犯したら反省しなければいけない。ジャニーさんはもういないけど、だとしたら彼が作った事務所がせめて変わっていくべき。自分も協力する。これからもこの経験を糧に成長していきたい』と発言! 大人な対応に社会も拍手! ネット民も称賛!!」みたいな事態が起きたりしないでしょうかね。。

しかも、「それは実は事務所側からの指示だった。全て事務所の振り付けだった」というオチ付きで。

妄想ではありますが、本件に限っては「絶対にない」とも言い切れないのがコワいところです。。。

「クローズアップ現代」の“ジャニーズと性加害問題”特集は、最高で最悪。
NHKプラスより

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