ひと冬の経験【初めての大腸内視鏡検査・後編】

前回は、「大腸内視鏡検査のために、食事制限して、下剤たくさん飲んで当日を迎えたが、出るもんがあまり出てこない」までお伝えしました。

で、「こんな状態ですけど、検査に向かっていいですか?」と病院に電話をしてみました。

ナース:お電話代わりました。今日は出てないんですか?

私:朝5時と、11時に出ました。

ナ:「水みたいな感じ」でした?

私:いや、朝5時のは昨夜の下剤が効いた分なんで、水ってほどじゃなかったです。ただ、11時のは…

ナ:「水みたいな感じ」でした?

私:はい、「水みたいな感じ」でした。その「水みたいな感じ」が1回だけなので気になってお電話しました。

ナ:だとすると「水みたいな感じ」のものは、もう出きったのかもしれませんね。

私:「水みたいなもの」が1回だけでも、ですか?

ナ:えぇ、「水みたいなもの」が1回だけでも、です。

私:このまま検査に伺っても大丈夫ですか?

ナ:えぇ、いいですよ。腸の中に少しぐらい残っているものがあっても。

私:エッ! 少し残っててもいいんですか?(「ゴマですよ、きっと!」と叫びたかったほどです)

ナ:えぇ、多少なら吸い取りながら検査もできるんで。

私:エッ!!!

そうなのです、いまどきの内視鏡は、多少の残留物があっても平気らしいのです。

まるでバキュームカーですね。

ということで病院に到着しまして、まずは検査準備です。

お尻部分が開閉できるタイプの検査着をもらって着替えます。

ズボン・下着はもちろん、靴下も脱ぐとのこと。

要するに下半身はスッポンポンになって、不織布でできているようなダボダボ短パン(お尻は開閉可)を履くという感じです。

そんなこともあってでしょうか、ナースさんが、ちょっとクドいぐらいに、

穴の空いているほうがお尻にきますから。後ろ側ですから。

と説明してくれました。

確かに穴の前後を間違えるとエラいことになりますから。

その後、診察台上で横向きに寝て、「腸の動きを止める注射」を打ってもらいました。

注射後にナースさんが「痛くなかったですか?」と言いながら、針を抜いた部分をグリグリと揉んでくれたのですが、それが一番痛かったです。

「さ、このあと先生がいらっしゃって検査が始まりますからね」との宣言に続き、男先生が入室し、いよいよ内視鏡検査のスタートです。

はい、じゃぁ始めますねー。

すべりを良くするためにお尻にゼリーつけさせて下さいねー。

ちょっとヒヤッとしますよー。失礼しますー。

も入れますねー。

ちょっと気持ち悪い感じしますよー。

はい、じゃぁ内視鏡入れますよー。

お尻が痛かったらゼリー足すから言ってくださいねー。

お腹が痛くなったり、変な感じがしたり、気持ち悪くなったらすぐ言って下さいよー。

はい、入ってますよー。

お腹にガス溜まってくる感じしますねー。空気入れてますからねー。

緊張すると、お腹痛くなりますよー。力抜きましょうねー。

大きく空気吸ってー。止めてー。 はい、ゆっくりため息みたいに吐きますよー。

こんな感じで先生からの励ましの声が聞こえるのですが、その後、先生は内容が聞こえないぐらいの小声で誰かに指示を出し始めました。

そう、そこで角度を変えて、○○○して。

今の動きと画面をよく見比べるよ。そうすると○○○になるから。

もっと3次元的に把握していかないと、○○○になっちゃうでしょ。

どうも、時々誰かに内視鏡の操作をさせているようです。

ナースではないな、研修医にでも操作させているんだろうな、とは思いましたが、ちょっと目を開けてみたら、そこには医者の卵と思しき若き女先生が立っていました。

女性に、おのれのお尻の秘門をさらし、そこから道具を突っ込まれ、それを出し入れされ、内部を覗かれ、その苦痛に顔をしかめる日が来るとは、これまで想像したこともありませんでした。

あーなーたにー、おーとーこのー、こーのー、いちばんー、たいせつーなー、ものをあげるわー

というフレーズが、山口百恵さんの歌声を伴いながら私の脳裏でリピートしまくっておりました。

検査もここまで来るとヤケクソモードに突入し、もうどうにでもなれと思ったのですが、腸内に送られる空気でお腹は張りまくりますし、内視鏡の移動とともにお腹のいろんなところがキューンと渋くなり、「あーん、漏れるー」みたいな感覚が断続的に襲ってくるので、まぁシンドかったです。

なのに、あいかわらず男先生は、

ここ、角度に気をつけて、もっと攻めて。

それじゃ映像がうまく撮れないよ。

はーい、空気吸ってー。

力抜いて下さいねー。

と、硬軟取り混ぜた指示っぷりです。

で、一番ツラかったのは、もうそろそろ終わりかな、いいかげん終わって欲しいな、というところで、

はい、ちょうど半分まで来ましたよー。

と言われた時です。

エッ!

まだ半分?

もう、グッタリです。 どんだけ長いんだ、大腸。

そこからさらに数分ほど経った頃でしょうか、早く終わってほしい一心で「すいません、あとどのくらいですか?」と訊ねたところ、男先生曰く、

「あと、25センチですよー」

とのご宣託が。

「あと25センチで最終到達地点まで達する」のか、「内視鏡を抜き出す残りが25センチ」なのかで、随分と意味合いが変わって来ますが、すでに確認する気力もありませんでした。

「お腹に入れた空気はねー、パンパンにならないようにちゃんと抜きながらやってますけどねー、どうしても溜まって来ることがありますからねー、そういう時はガマンしないで出しちゃって下さいねー」

とも言われましたが、「何かが突っ込まれている肛門を、自分で少しだけ緩めて、ガスだけ排出する」なんて器用なことができる人などいるのでしょうか?

「先生が出せというんだから、やってみるか? いや、へたに力む(りきむ)とガスだけじゃなく、中味まで出て来そうな気がするし。 いや、中味はとっくに空っぽだろ。 キバったと同時に内視鏡が押し戻されて来たら、先生に笑ってもらえるかな?」などと、訳のわからない自問自答をしながら、とにかく耐えるのみです。

そんなこんなで、長かった検査も終了。たぶん30分もかかっていないとは思いますが、人生で最も長い30分だったと断言できます。

で、男先生と女先生は退室し、ナースだけが残ります。

「このあと、まだ何か?」と思ったら、

「まだお腹にガスが溜まってますから、それを抜きましょうね。管を入れますよ。失礼しますね。お腹をさすりますよ。はい、横向いて下さいね」

などとやられているうちに腸内をガスが移動し、力みもしていないのに、勝手に管からガスという名のオナラが排出されます。まさに全自動。

しかもその管の先は、水の容器に浸けてあり(おそらく臭い対策?)、ガスが出るたびに「コポコポコポ」と軽妙な音を立ててくれるのです。

あぁ、なんという羞恥プレイ。。。

結局、大腸内は大変キレイで、ポリープも見当たらないとのことでした。

そうすると、便潜血の原因が分からなくなりますが、先生曰く、

「大腸の出口あたりが擦れすぎて出血することもあるから、それでしょうね」

だそうです。

「ケツを拭く時に、ガシガシと力入れすぎなんだよ、アンタ」とハッキリ言ってもらった方が分かりやすいのですが、この辺が品位ある医者の所作というものなんでしょう。

「ウ○コが固くて」とか「痔になって」ということでも便潜血反応が出るらしいのですが、その都度大腸ガンなどを疑って、こんなシンドい内視鏡検査をしていては、まったく割に合いません。

ということで、どちら様も、良いお通じに恵まれますように。