「サラリーマン時代に蓄えたなけなしのお金を、この先どう使っていくか」をあれこれ考えて実践してきた行動記録の6回目です。
前回は、金融資産(ペーパー資産)として、国債や投資信託などいくつかの商品を「試し買い」したところまでお伝えしました。
で、今回は資産運用におけるもう一つの大きな柱である「実物資産」についてのお話です。
「実物資産としての不動産」を意識したきっかけ
「お金の専門家による無料相談」の記事でも触れましたが、専門家さんのお一人から、
「(分散投資の一環として)金融資産だけでなく実物資産も組み合わせてみては?」
とのアドバイスをもらいました。
で、この専門家さんが推奨する「実物資産」の中身は、
「海外不動産。もし為替リスクが気になるなら国内不動産を」
というものでした。
一方、別の専門家さんからは、
「土地勘もないまま海外不動産投資など、もってのほか」
と、真逆の助言もあったので、「要するに、いろいろ難しくてメンドくさいのが不動産投資というものなんだろ、きっと」ぐらいに考える時期が、私の中でしばらく続いておりました。
そうこうするうち、たまたまネット上で「東京都内に限定した中古ワンルームマンション投資」に関する無料セミナーの案内広告を見かけました。
念のため解説しますと、実物資産とは「形を有し、そのもの自体に価値がある資産」のことです。
よって、不動産以外にも「金やプラチナなどの貴金属」「美術品」「原材料(原油・穀物・金属)なども実物資産に含まれるそうです。
株式を発行した企業が倒産(通貨を発行した国家財政が破綻)すれば、現金や株式といった金融資産の価値は全くなくなってしまいますが、経済環境が悪化したからといって価値がゼロになったりしないのが「実物資産」の特徴と言えます。
そんな実物資産の中でも、不動産は比較的分かりやすく、なじみやすい部類に入ると思います。(というか、貴金属や美術品、原材料については、それらを実物資産として意識したことがないだけで、不動産が無条件で取っつきやすいわけではありませんけど)
また、都内の不動産(しかもワンルームマンション)となれば、そんな物件に自分が住んだ経験もありますから、絵画とか大豆に比べれば、圧倒的に土地勘が働く領域と思われます。
ということで、「どうせタダだし」という気楽さも手伝い、都内の中古ワンルームマンション投資セミナーに参加することにしたのです。
セミナーの様子
聞きに行ったのは、早期リタイア前年の夏だったと思います。
セミナーを主催していたのは不動産売買・賃貸物件管理を行なう会社でした。
正直言うと、それまでまったく見聞きしたことのない会社でしたから、胡散臭いセミナーだったらメンドくさいな、という不安感を抱えたまま会場入りしたのですが、会場周辺での来場者誘導や受付、さらには配布資料や茶菓を含めたホスピタリティの高さから、「あ、わりとちゃんとした会社かも」という印象を持つことができました。
この投資セミナーは定期的に行なわれているらしく、社員さんが務める講師の説明は、まさに「立て板に水」でした。
同様に、投影するパワーポイントの画面展開にぴったり合わせて決めゼリフを発するなど、強調したい部分の演出も完璧で、まったく退屈することはありませんでした。
多少脱線するかもしれませんが、演出の一例をご紹介します。
「カネがあるからといってバンバン無駄遣いばかりしていては、資産形成などできない。資産から産み出された利益(この場合は家賃)だけで暮らしていければ、資産を減らさずに済む」
というような説明のくだりで、
「コップの水は、満杯になったからといって、そのまま飲んじゃダメです。表面張力を起こして、やがてそこからこぼれ落ちてくる水だけを飲むようにするのです」
と話しながら、講師さんは実際にコップを手に取り、そこに水を注ぎ、水を溢れさせ、コップから床に水をしたたり落とすというシーンを実演したのです。
私は最前列の席に陣取ったのですが、実は講演開始前から、演台横の足元に大きめのタオルが敷かれていたのが、ずっと気になっていました。
で、そのタオルが、「演出によってコップからこぼれた水を受け止めるために敷かれたものだった」ことを知った途端、「おぉ、これはテッパンの演出なのだ。毎回ここで水を床にこぼすのだ。回数を重ねているぶん、敷いたタオルに対する立ち位置とかタオルの面積とか、すべてが計算され尽くしているのだろう。スゲー、スゲー」と妙に感心してしまったことを、今でも覚えています。
セミナーで語られたこと
話を戻します。
ここからは、セミナーや、その後に続けて開かれた個別相談会で見聞きした情報のうち、私が注目した点・気になった点をQ&A形式で整理してみます。
※あくまで私の理解です。少なからず誤認を含んでいる可能性もありますので、念のため。
※特定の不動産販売・賃貸管理会社のセミナーから得た情報ですが、その会社のPRをすることを目的とした記事ではないので、会社名は特に紹介しません。
Q:なぜワンルームマンション? ファミリー向けマンションの方が家賃が高くなって儲かるのでは?
A:ワンルームは、その物件に住むかどうかの意思決定者は1人だけなので入居が決まりやすい。
部屋が狭いのでリフォームの費用が安く、期間も短いのでランニングコスト面で有利。
ファミリー向け物件は、すべてがこの逆。
Q:なぜ中古? 新築の方が家賃収入の面では有利では?
A:新築だと販売価格に広告費や人件費などの販促コストやデベロッパーの利益分が上乗せされ、その分も払わされることになるから割高。
中古にはそのような価格転嫁がないので、安く買える。
建物が既に稼働しているので、管理状況も把握しやすい。
「新築扱い」で高めに設定した賃料も、2人目の入居者以降からは「中古扱い」となり、賃料が下がりがち。それに対していったん中古になれば賃料は安定した状態になっている。
Q:なぜ都内限定? 地方都市の方が物件価格(投資額)が少なくて有利では?
A:転入超過数(転入者数と転出者数の差)は東京都がダントツに多い。しかも若年層や働き盛りが転入してくる。
東京は政治・経済・文化の中心であり、カネも人も集まっている。
加えて、今後も都内各所で再開発が進み、高い賃貸需要が見込める。
そんな場所は東京だけ。
Q:仮にアパートを一棟まるごと所有すれば、仮にそのうちの1室で空室が発生しても家賃収入はゼロにはならないので、ワンルームマンションの区分所有よりリスクが少ないのでは?(アパート1棟なんて、そんな高い買い物はできないけど)
A:「新しい集合住宅が建つ」「近所の大学や工場が移転する」など、そのアパート周辺の環境が変わると、所有した一棟の全居室に影響が及ぶ。
また、一棟買いすると、エリア・購入時期・築年数などの条件が全室とも同一になり、分散投資の観点からリスクが高い。
Q:「分散投資」を言うのであれば、「都内の物件ばかり」では分散とは呼べないのでは?
A:都内の同一地域でなく、異なる立地の物件を複数所有すればリスク分散は可能。
Q:なぜローンを組んでまでマンション購入を勧めるの?
A:マイナス金利の影響で、ローンの借入金利と投資利回りの差を利用しやすい。
サラリーマンはキャッシュがなくてもローンが活用できるので、お金を借りながら、不動産投資ができる。
家賃収入をローン返済に充て、返済が終われば、不動産という実物資産を手にしながら家賃収入が得られ続ける。
Q:入居者がいなければ家賃収入もなくなるから、リスキーなのでは?
A:だから一極集中し、経済力もある「東京都内」のワンルームマンションがおすすめ。
加えて駅から徒歩15分以上かかるような物件は、所有しないように。
また客付けしてくれた(入居者を決めてくれた)賃貸仲介会社には、各種インセンティブを与えるなど、入居者確保に身銭を切っている。
Q:入居者募集だけでなく、家賃交渉、家賃滞納の督促、入居者退出時のメンテナンスなど、もろもろの管理作業をやる自信もノウハウもないが?
A:全部代行する。
内装の修繕・改装についても全部(リーズナブルな価格で)請け負う。
Q:それらの管理を委託する手数料が高いのでは?
A:他社に比べても同レベルか、むしろ安いほう。
加えて空室保証や家賃滞納保証制度もある。
Q:おたくの業界内のポジションは?
A:中古ワンルームマンション専門としてはトップクラス。
Q:自分は早期リタイアするからローンを組めなくなるが? 現金購入でもいいの?
A:もちろん。
もしローンで買うなら退職前に早めに購入を。
Q:ワンルームマンションの耐用年数は?
A:鉄筋コンクリート造マンションの法定耐用年数は47年。
一般的には60年くらいと考えられている。
建設会社は「理論値で90年」とコメントしている。
Q:中古物件だと、耐用年数が短くなってしまうのでは?
A:利回りから考えるべき。仮に4%の利回りなら25年で元が取れる計算になるので、それ以上の耐用年数があれば十分ペイする。
Q:いつまで物件を保有しておけばいいの? いずれどこかで売却するの? いわゆる出口戦略は?
A:購入金額分を回収したあとも家賃は受け取れるので、マンション寿命が尽きるまで持った方がいい。
寿命を迎えて取り壊しになっても土地の所有権は残るので、建て替えの新規事業主に土地を売却することもできる。
そのためにも人気のある立地を選ぶこと。
Q:部屋から火事が出ちゃったら?
A:鉄筋コンクリート造であれば被害は最小限にとどめられるし、火災保険に入っていれば、復旧費用もまかなえる。
リノベーション工事によって、火災前より部屋をグレードアップすることができたケースもある。
Q:外国人が入居すると、契約外の人が複数人で住み着く、ゴミ出しマナーを守らない、家賃が滞納されるなどのリスクが高まるとも聞くが?
A:そういうことが起きないように、専門の保証会社やコンサルタントと提携したり、外国人スタッフを在籍させている。
そもそも実績として、「外国人は日本人入居者に比べて滞納が多い」というようなデータはない。
日本人・外国人問わず、問題が起きないような管理をするのが大事だし、実際に対応している。
日本人だけをターゲットとした不動産経営はもはや時代に合わない。
Q:東京オリンピック・パラリンピック後には値崩れするような予想を立てる人もいるけど?
A:2020年以降に東京のパワーが減退するとは考えていない。
Q:早く買うほうがいいの?
A:ワンルームマンション開発に関して、条例などで規制強化が進んでおり、今後、都内の優良な中古物件が激減することが予想されるので、早い方がいい。
Q:大地震が来たら?
A:だからこそ、鉄筋コンクリート造の物件が大事。
特に、新耐震基準で建てられていることが重要。阪神大震災・東日本大震災でも実証済み。
Q:都内だけに不動産を所有してしまうと、万一、東京に何らかの「壊滅的な被害」が発生した場合、資産価値が大きく毀損されてしまい、経済的に大きな痛手となるのでは?
A:確かにそういう考えはあるが、そんな事態が来た時には、他の実物資産や金融資産だって、相当ヒドイことになるはずだから、不動産投資だけの話ではなくなる。
あえて言えば、不動産投資なら、最悪でも土地は残る。
セミナーに参加した感想
上記Q&Aにもあるように、ちょっとイジワルな質問に対しても、誠実に回答していただき、企業姿勢としては好感が持てました。
また、講演を聞きながら、「実際にマンションを買ったら、『賃貸物件に暮らしながら、他人に物件を貸すマンションオーナー』という、面白いポジションに立てるな」と想像して、1人ニヤケていたのではないかと思います。
ただ、これで全ての疑問が払拭したわけではなく、むしろ新たな疑問や不安が出てきたのも事実です。
例えば、
「火災後の改装でグレードアップできたとしても、風評被害はしばらく続くよなぁ。『入居者死亡』によって事故物件にでもなったら、大島てるさんのお世話にもなるんだろうし。買った後でホントにそうなったらイヤだなぁ」
「蓄えた預貯金の範囲で現金購入するとして、資産全体のうちの何割をワンルームマンション投資に回していいのかが、よく分からないなぁ。営業マンに訊けば、たぶん『今なら買えるだけ買ったほうがいい』みたいな話にしかならなそうだし」
「ヘタすると、実物資産10割、金融資産ゼロという極端な資産配分になりかねないなぁ。それじゃ分散投資じゃなくなるよねぇ」
などです。
「実物資産:金融資産」の比率を考える上で、今後は「金融資産」側の知識が必要かも、と思いながらセミナー会場をあとにした次第です。
ということで、「金融資産」側の情報収集については、また次回にでも。
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