「NHKから国民を守る党(N国党)」が議席を獲得した選挙後初の参議院臨時国会が1日に召集されました。
各メディアは、N国党代表の立花議員が初登院し、議事堂の前で例の「ぶっ壊すボーズ」を何度も披露し、国会議員会館の自分の事務所にテレビを据え、NHKが映ることを確認してから「受信料は踏み倒します」と発言するシーンなどを報道しました。
一方NHKさんは、7月30日付で「受信料と公共放送についてご理解いただくために」と題するプレスリリースを発表しています。
受信料制度や受信料の公平負担について、誤った認識 を広めるような行為や発言に対しては、きちんと対応してまいります。
さらには、
明らかな 違法行為などについては、放置することなく、厳しく対処してまいります。
という、NHKにしてはシビアな表現を含んだ文章となっており、N国党の国会活動開始を見据えた、ある意味「宣戦布告」のようなプレスリリースになっていました。
で、この「きちんと対応」「厳しく対処」の中身ですけれど、少なくともN国党に対してNHKがどう向き合うのか(向き合い始めているのか)が、なんとなく見えてきたように思います。
それはつまり、「N国党を極力無視する」という戦術です。
立花代表が当選し、丸山穂高衆議院議員が入党し、渡辺喜美参議院議員と統一会派を作り、「ぶっ壊ーす、ぶっ壊ーす」と連呼しながら登院する様子を民放がこぞって報道する一方で、NHKさんの報道量は極めて少ないように思われます。(れいわ新選組の新人議員についてはちゃんと伝えているだけに、実に対照的です)
ということで、手元にあるパナソニックの全録レコーダー(とテレビ番組情報ウェブサービス「ミモーラ」)を用いて「NHKが『N国党をどのくらい報じているのか・いないのか』」をチェックしてみました。
【おことわり】
以下の検索結果は8月3日午前時点のものです。
ここで分かることは、
- NHKは、ニュースを含む全番組内を通じ、N国党についてを報じていない。(少なくとも今のところ)
- ただし、放送行政を所管する総務大臣が、N国党に対して(批判的な)コメントを出した時だけは、ニュースで取り上げる。
- その場合でも、夜の『ニュース7』や『ニュースウォッチ9』、さらには翌日の『おはよう日本』といったといったメジャーなニュース番組では放送せず、昼〜夕方の定時ニュースだけで取り上げる。
ということです。
つまり、「N国党の知名度向上に寄与してしまわぬよう、自発的には取り上げず、その代わりに総務大臣から叱ってもらう」というのが、NHKさんの「きちんと対応」「厳しく対処」の具体的なやり方なんだと思います。(ただし“今のところ”ですが)
【余談1】
検索もれがあるといけませんので、念のため「国民を守る」だけでなく「N国」でもシーン検索してみました。
こんなものまで「N国」で検索してしまうパナソニック全録マシン、恐るべし。
【余談2】
N国党さんの立花代表はNHKの政治討論番組『日曜討論』への出演をねらっているそうです。
で、同代表によると、この番組の出演条件は「得票率2%以上で、党所属議員が5人以上であること」なんだとか。
だからこそ、立花代表はいろんな「いわく付きの議員」を入党させたり統一会派を作ったりして勢力を5人以上にしようといるのでしょうが、たとえ基準をクリアしたとしても、NHK側の「きちんと対応 & 厳しく対処」によって出演を阻まれることが容易に想像できます。
つまりNHKは、
- N国党は、受信料制度や受信料の公平負担について誤った認識を広めるような行為や発言を繰り返している。
- 受信料の支払い拒否はそもそも放送法に違反している。
- 立法に携わる国会議員が、自ら法律を破るなど、許されるはずがない。
- 放送法の第一条で謳われている「公共の福祉」と「その健全な発達を図る」という立法精神にも抵触する。
- 同じく第三条で「放送番組編集の自由」が謳われているので、『日曜討論』への出演を最終的に判断するのは、われわれNHK側であり、それに対して「何人からも干渉されない」。
- だから、今後もN国党さんに出演をお願いすることはないし、ニュースからも極力排除します。
という理屈で対抗するんじゃないかと思います。
まぁそうなったら立花代表も策士ですから、
- 同じ放送法の第四条の四には「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と書いている。
- 受信料の是非とNHKのスクランブル化は、国政選挙において現にこうして当選議員が誕生するほどメジャーな考え方になってきている。
- 「論点を明らかにする」ために我々を『日曜討論』に出演させろ。
- そうでなければ、NHK自身が放送法第四条の四を犯すことになるぞ。
などと反論するんじゃないでしょうか。
私個人としては、例えば「大麻を吸いながら医療大麻の合法化を訴える人」が好きになれないのと同じで、せめて国会議員になっているうちは受信料を払った上で放送法の改正に向けて活動すりゃいいのに、とは思いますが、そこには立花さんなりの戦略があるのでしょう、たぶん。
N国党の会派「みんなの党」は、くじ引きで参議院予算委員会メンバーの“最後の1枠”を引き当てたんだそうです。
各種委員会の中で最も目立つ「何でも質問できる委員会」ですから、それを国会中継をしなければならないNHK側は、今から戦々恐々としていることでしょう。
秋からの国会論戦が楽しみになってきました。
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