「キャッシュレス決済でトクするための情報」に見る効用と限界。

「キャッシュレス決済でトクするための情報」に見る効用と限界。 Money/お金
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先週から始まった消費税税率アップに伴い、いろんなメディアで「国のキャッシュレス・ポイント還元事業で少しでもトクをするには?」という特集が組まれています。

メディアの報道にはしばしば見受けられることではありますが、こと今回のキャッシュレス決済に関しては、「こういう場合にはAがおトク、ああいう場合にはBがおトク」という情報を紹介する際に、関連情報(しかもわりと大事な)の一部が常に欠損しがちなように感じます。

 

例えば、私が先週見ていたテレビの情報番組では、スタジオでこんな説明をしていました。

  • キャッシュレス決済の手段はいろいろあるが、クレジットカードデビットカードなら、事後にカード会社や銀行が還元ポイント分の金額をまとめて調整・精算してくれる。
  • ユーザー側は取り立てて何かの手続きをする必要がないから、簡単でおすすめ。 うんぬん

 

ここだけ聞けば確かにその通りなのですが、ただ、クレジットカードやデビットカードの発行会社が独自に付与するポイントの通常還元率といったら、せいぜい「利用金額の1%程度」が相場なはずです。

一方、
「独自の還元分は通常でも1.5%。今回の還元事業で5%還元の対象店舗なら、11月いっぱいまで独自分を5%にしちゃうよ。合計すると還元率は10%だよ」
みたいなことをやってユーザーを囲い込もうとしているPayPayに象徴されるように、スマホ決済アプリの中にはクレジットカード側を上回る独自還元率を設定しているところが多く見受けられるのです。

もちろん、カード会社の中にはそれを上回るような「期間限定・還元上限額ありのキャンペーン」をやっているところもありますから一概には言い切れませんが、だとしても、
多少の手間を惜しまないのであれば、独自還元率の高いスマホ決済アプリのほうが総じておトクだよ。ただし、この期間に限っては『◯◯クレジットカード』をスマホアプリ経由で利用すればさらにおトクだけどね」
ぐらいの情報を付け加えてくれてもいいのではないでしょうか。

 

おそらく「このご時世、テレビをメインで見ているのは中高年なのだから、なるべく情報を単純化してあげないと理解されない」という制作者側の思いもあるのでしょうが、視聴者の中には、
「退職して時間もたっぷりある。手間はなんぼでもかけるから、とにかく一番おトクな情報を、一切省略せずに、俺にくれ」
という人だって少なからずいるはずです。

そう考えると、
「あんたたち、めんどくさいことできないでしょ? パソコンとかスマホとかアプリとか、どうせ分かんないでしょ? だったら、還元率が高いとは言えないけど、おとなしくクレジットカードでも使っとけばいいんじゃね?」
みたいな情報提供のやり方は、視聴者をちょっと見下しているような気がしました。

 

 

それから、こんな解説も気になりました。

  • SuicaやPASMOなどの交通系カードで国のキャッシュレス・ポイント還元を受けるためには、パソコンやスマホを使った事前登録が必要。
  • しかも還元されたポイントを電車代や買い物で使うためには、事後のチャージ手続きも別途必要になる。
  • しかし、大手コンビニ4社なら、交通系カードの事前登録や事後チャージなどをしなくても、支払うその場でポイント還元(=即時現金値引)してもらえる。
  • コンビニでは、国からの還元率は2%にはなるが、手続き不要で簡単。おすすめ。 うんぬん

 

この説明も、「視聴者は手間をかけたくないはず」という“善意”に基づいているのだろうとは思います。

しかし、この情報を素直に受け止めて「コンビニなら何も考えなくても国からポイント還元される → Suicaで買い物するならコンビニがいい」というふうに短絡的な行動に走ると、視聴者が結果的に損してしまうのは明らかです。

実例をあげます。

  • コンビニで「軽減税率8%で売られているアイスクリームA」があったとします。
  • 値段は、税込で151円だとします。
  • Suicaで支払ったら2%がその場で還元されて3円値引きされました。
  • お支払額は結局148円になりました。

次に、同じアイクリームを都市型小型食品スーパーで買った場合です。

  • ◯◯ストアに「軽減税率8%で売られているアイスクリームA」がありました。
  • 値段は、税別で98円。軽減税率8%の税込で105円でした。
  • このお店は「国のキャッシュレス・ポイント還元事業」の対象店舗ではないので、事前登録してあるSuicaで支払っても、国からは何の還元もありません
  • よって、お支払額は105円のままでした。

 

というように、このケースでは「還元事業」対象外の後者スーパーのほうが同じアイスクリームをコンビニより43円も安く買えるのです。(実話です)

しかも、実際には「スーパー独自のポイントカード」もありますから、後者スーパーのおトク度はさらに高いわけです。

 

「同じ食品なら、スーパーよりもコンビニのほうが(通常販売価格は)割高なことなんて、当然だろ。常識だろ」と呆れている方がいらっしゃるかもしれませんよね。

しかし、世の中には「店舗別の価格相場の違い」などを全く意識していない人も意外といるもので、現に私がサラリーマンだった頃は、“平均よりちょい上”ぐらいの定期収入があったため、「コンビニの商品価格を他店と比べる」どころか「レシートを受け取る」ことすらしていませんでした。
(早期リタイアしてフリーランスの個人事業主となった今では、レシートを捨てるなど、到底あり得ませんがw)

そんな当時の私が、今般の「事前登録しないSuicaでも、コンビニならその場で値引きされるよ!」という単純化された情報に接したとしたら、日々の食品購入を盲目的にコンビニに集中させてしまっていたような気がします。

 

というように。

それ自体は事実でも、「それにまつわる周辺情報が欠落」すると、本当に望んでいる「トクする自分」から、むしろ遠のくことにもなりかねません。

くだんの番組では「情報を得た人だけがトクをする現状」を、若干ネガティブなトーンでコメントしておりましたが、そうは言っても「情報弱者でもトクする社会」というのは、なかなか難しいのが現実ではないでしょうか。残念ですけど。

 

つまるところ、情報収集や手続きなどを含め、「手間ひまかけてトクする」か「手間ひまかけずに金をかける(金がかかる)」かのどちらかになるんだと思いますが、私の場合、「平日は、連日残業のオンパレード」という時間に追われる生活から解放されているのですから、自分に出来る範囲で「金をかけずに手間ひまをかける」ほうを選んでいきたいと思います。

 

(とは言え、今回の消費税率アップによって、世の中じゅうに「トクしたい。安く済ませたい」という風潮が蔓延し、消費が抑制させられるのだとしたら、景気はさらに減速してしまうような気がします。なんせ「消費したら税金取るぞ!その割合を増やすぞ!」と、まるで消費が“懲罰対象”になったみたいな話ですからね…。果たしてどうなるんでしょうか)

 

 

 
 

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