中居正広氏による元アナウンサー女性Aさんへの性暴力トラブルについて、フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会によって調査報告書が公表されました。(3月31日)
公表版(本編に相当)が273ページ。
要約版でも51ページ。
役職員へのアンケート結果をまとめた公表版別冊だけでも43ページ。
せっかくなので、全273ページの公表版をざっと読んでみましたが、膨大な分量だけでなく、内容自体も想像以上の力作でした。
各種報道などでは割愛されている部分も含め、私が興味深く感じた点などを備忘メモとしてまとめておきます。
積極的に調査に協力したフジテレビ社員
第三者委員会は、社外役員を除く全役職員(役員&職員)に対してアンケートを2回実施していますが、回答率は1回目が89.8%、2回目が87.9%と、ほぼ9割の人が回答しています。
電話で実施する一般の世論調査では4割程度がザラですから、調査手法の違いがあるとはいえ、この回答率(協力度合い)は極めて高いと思います。
それだけ役職員、特に一般従業員においては、会社に対する不満も危機感も高まっているということかと想像します。
デジタル・フォレンジック調査のすごさ
各種デジタルデバイスに残された電子データの証拠保全・調査・分析、さらには改ざん・毀損に関する調査・分析する手法を「デジタル・フォレンジック」と言うそうです。
今回は会社が貸与したPCやスマホはもちろん、個人利用のスマホに対してまでこの保全や調査を実施したそうで、調査対象者ごとに「どのデバイスや何のデータを保全したか」までが開示されています。(公表版の269〜273ページ)
とりわけ興味深かったのは、
- 主要関係者である港社長・大多専務などの役員、そして中居氏と頻繁に連絡を取っていた編成部長のB氏(肩書はいずれも当時)を含め、多くの役職員が個人利用(私物)のスマホについても保全に応じていること。
- 中居さんは「被害女性Aさんとのショートメールでのやりとりは削除済みと述べた」こと。
(公表版26ページ。まぁ、ホントに削除したとしても、女性Aさん側のスマホにはデータは残っているハズなので、無駄な抵抗としか言いようがないです…。ちなみに中居さんはフォレンジック調査の対象者リストには含まれていません。常識的に考えれば拒否なさったんだと思われます) - Aさんから届いた事件後の体調の訴えを、中居さんはB氏に対して「やりたい仕事もできず、給料も減り、お金も無くあの日を悔やむばかりと。見たら削除して」とショートメールで報告し、それに対してB氏から「なかなかですね、、私から無邪気なLINEしてみましょうか??」と返信していたことが世間でも話題となりましたが、B氏は中居さんの要請通りにこのショートメールを削除していたそうです。
しかし、フォレンジック調査で見事に保全されたため、日の目を見ることになってしまったわけです。カッコわる…。(公表版36ページ)
- 上記以外にも、関係者のショートメールチャット、LINEチャット、Microsoft Teamsチャットのデータが削除されていること、そしてその中には復元できたデータもあったという事実。
フォレンジック、恐るべし。(公表版273ページには「調査で判明した削除電子データの件数」まで載ってます) - これら一連のフォレンジック結果は、別紙として公表版の最終部分に付記されていて、その最後の最後に「編成部長B氏は有力出演者タレントU氏、中居氏、K弁護士との間でやりとりしたショートメールチャットデータ325件を2025年1月9日から2025年2月1日にかけて削除している」ことが記されているので、B氏の小心っぷり、隠蔽っぷりが非常に目立ってしまっている点。(全273ページの最後が、この1文で終わってますので)
といったあたりでして、これらは大変味わい深く読ませてもらいました。
記載された関係者のアルファベットによる匿名化
取締役以上の役員(日枝氏を含む)、そして中居氏以外の関係者は、すべて「A氏」「B氏」という形で匿名化されています。
よって、読み始めた頃は「ん、やたら出てくるG氏って誰だっけ? B氏の上司だっけ? うーん、頭に入ってこない…」という感じだったのですが、事実関係の記述が詳細かつ具体的であり、読み進めるうちにA・B・C・Dというアルファベットに人格を投影できるようになってしまい、これには自分でも驚きました。
とはいえ、これから読まれる方は、最初のうちはこんな感じで「第1章の前の関係者一覧」を別ウィンドウで開きながら読み進まれることをおすすめします。↓
(言うまでもなくパソコンでの閲覧を推奨)
港社長のこだわりポイント
昨年12月19日の女性セブンによる初報道、12月23日に週刊文春から届いた質問状、そして12月26日の文春砲第1弾記事発表という事態を受け、フジテレビはホームページ上でリリース文を翌27日に出すのですが、報道対策チームによる“リリース文発表当日の社内最終確認”のくだりは臨場感がありました。(公表版72〜76ページ)
- 12月26日で仕事納めだったためか、27日の最終確認には役員は誰も参加せず。
(前日に文春砲が炸裂しているのに、です) - 港社長は、当初の予定通りゴルフや会食・宴席に参加。
(前日に文春砲が… 以下略) - そのくせ、会社から送られてきたリリース文案に対しては、港社長は「ステークホルダーという言葉が一般人に分かりにくい」「文春の記事を否定するためのリリースなのに、このタイミングで何故、CX が誠実に向き合いますみたいな文言を出す必要があるのか」と繰り返し主張。
(会食・宴席を優先し、社外からアルコール混じりで電話でのやり取りを続ける社長に対して、スピーカーホンで聴いていたチームメンバーの中には怒りを隠さない人もいるんだとか。当然かと…)
さらに、2025年1月17日の「1回目の(動画撮影禁止の)記者会見」を報じた自局の報道番組「Live News イット!」におけるサイドテロップが「謝罪」となっていたことに対して、港社長は「あれは説明だ、謝罪ではない」と怒りながらクレームをつけ、担当役員経由で伝えられた報道局はその後「謝罪」との言葉を避け、「説明」と表記するようになっていったそうです。(公表版89ページ)
企業風土として問題視されている同社の会食・宴席カルチャーですが、実は前社長は意外にも会食と同じぐらいに「言葉」も大切になさる方だったようです。(←もちろん皮肉)
まぁ他の役員も似たり寄ったりではありましたが、こと港さんに関しては「事態を矮小化しよう」とする言動が随所に見られ、「社長になんか就任してはいけない小粒な人間」像が、これでもかというほど、そしてちょっと同情したくなるほど描写されておりました。
報告書(実名版)の扱いについて
第三者委員会は、関係者や取引先の実名を記載した本調査報告書(実名版)を二部作成したそうです。
本来なら実名版を取締役会メンバー全員に配付することになるのですが、「過去の報道等を見る限り、当社内の機密情報が社外に流出しているおそれがあるようにも感じられ、当委員会としては、取締役会及びその関係者から外部への情報流出も現実問題として懸念せざるを得なかった」そうです。
結局、二部の実名版はFMH代表取締役社長である金光氏と、フジテレビ代表取締役社長の清水氏に一部ずつ渡して「厳重に保管して情報管理を徹底するとともに、今後の再発防止等の業務執行に活用することを申し入れた」とのこと。(公表版6ページ)
情報コンテンツが商品であり財産のはずなのに、その情報の管理が全然信用できない会社というお墨付きをもらった形であり、さすがにどうなのこれ? といった印象です。
(これですら、いずれ外部に流出しそうな気がします)
まとめ
「自分のちょっとした判断ミスが、こんな大ごとにつながるとは思わなかった」
「これまでも、そして今でも、他の人もやってきたことなのに、どうしてよりによって自分の時だけ問題になってしまったのか」
「あの時、最初からこうしておけばよかった」
「自分のミスじゃないのに、なぜ自分が問題解決させられているのか」
「自分が対処するのはいいけど、自分以上に深く関わっている人や部署が一緒にやらないのは納得いかない」
「誰に相談すればいいのか。そもそも責任の所在はどこなのか、誰なのか」
「偉い人たちの指示がバラバラ。そのくせ集まって議論するつもりもなく、個別に意見してくるので、対応のしようがないし時間ばかり浪費していく」
「評論家みたいなアドバイスとか、自分は何もしないくせに理不尽な叱責だけを浴びせてくる上司ってなんなの?」
「なんとか解決しても労をねぎらわれることもなく、それどころか『今後の再発防止策はまだできないのか、遅すぎる』など、注文が上乗せされていくだけ。もうヘトヘトなんですけど」
などの憤りを感じながらトラブル対応に当たった経験は、集団で仕事をしていれば誰でも一度は経験しているでしょうし、役職昇進に比例してトラブルの頻度も難易度も上がってきたりするものです。
自分の過去の言動を省みる意味でも、そして今後の自分を律する意味でも、本当に勉強になる教材だと思います。
要約版ではなく公表版をザーッとでもいいので、ぜひお読みになることをおすすめします。
余談
今回の調査報告書を取り上げる報道においてあまり言及されていない記述の中にも、気になる箇所はいくつもあります。
- 「芸能プロダクションとの会合に女性アナウンサーが参加させられる」類似事案の存在。(公表版165ページ)
- Aさん退職後は「ありがとう。ひと段落ついた感じかな。色々たすかったよ。」「引き続き、何かお役に立てることがあれば、動きます!」などと良好な関係性を確認し合った中居氏とB氏。(公表版51ページ)
- なのに、いざ問題が発覚して騒ぎになり始めると、女性Aさんの誘いかたを問いただしたB氏に対して中居氏は「そこから守秘義務の範囲だから、答えられないよ。」と突っぱね、それを受けたB氏はB氏で「中居氏がごまかした回答をしている可能性があり、自分の名前を使って女性Aを呼び出した可能性もあると感じた」と上司に話すなど、信頼のかけらも感じられない疑心暗鬼の関係に堕ちていく二人。(公表版75ページ)
などなど、サスペンス小説的な要素すら感じられます。
そのうち、Netflixさんあたりがドラマ化しそうな予感もありますが、ぜひ“原作本”として一家に一冊、いかがでしょうか。
【参考】
日本弁護士連合会さんの「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」解説ページ。

内閣府 男女共同参画局さんの「性犯罪・性暴力とは」解説ページ。
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